生前に全額預金をおろしておくのは得策?相続で起きる問題

生前に全額預金をおろしておくことで起きる相続の問題を例で確かめる記事のアイキャッチ

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親が亡くなると口座が止まると聞いて、『今のうちに全額おろしておくのがいい対策では』と考える方もいますよね。

結論から言うと、生前に預金をおろしても相続税は減りません。むしろ、税務調査や兄弟の間でもめる種になりやすいんです。この記事では、おろしたお金がどう扱われるかをケースごとに見ていきます。

目次

預金を全額おろしておけば、相続税は減る?

このケースではこうなる

亡くなる前におろした預金は、家に置いてあれば「現金」として相続財産に入ります。子に渡していれば贈与になり、贈与税や相続前の足し戻しの対象です。口座から現金に形が変わるだけで、相続税は減りません。

相続税は、亡くなった日に持っていた財産全体にかかります。預金が現金になっても、財産の額は同じです。

『現金なら銀行の記録に残らないから、分からないのでは?』と思うかもしれません。ただ、税務調査では亡くなる前の口座の出入りが確かめられます。まとまった引き出しがあれば、そのお金がどこへ行ったかを聞かれるんです。

国税庁の公表では、令和6事務年度の相続税の実地調査は9,512件で、申告漏れなどが見つかった割合は82.3%でした。1件あたりの追徴税額は867万円です。

おろしたお金の行き先で、税金はどう変わる?

例えば、父が亡くなり、母と子2人が相続するケースです。父の財産は自宅と預金で合わせて8,000万円。亡くなる半年前に、預金から3,000万円を引き出していたとします。

ケース3,000万円の扱い相続税の総額注意
何もしない預金として相続財産350万円口座は止まるが、仮払い制度がある
引き出して家に保管現金として相続財産350万円申告から漏らすと加算税・延滞税
引き出して子2人に1,500万円ずつ渡した贈与。相続前の足し戻しの対象350万円贈与税もかかり、贈与税額控除で調整
亡くなった後に引き出して葬儀費用を払った葬式費用として差し引ける葬儀費用の分だけ下がる領収書を残す。四十九日や墓石の費用は対象外

どのケースも、課税価格8,000万円のままなら相続税の総額は350万円です。基礎控除4,800万円を引いた3,200万円を、法定相続分で分けて計算した数字です。

子に渡したケースは、さらに負担が増えます。18歳以上の子が1年に1,500万円をもらうと、贈与税は1人366万円です。相続税から差し引けるとはいえ、先にまとまった税金を払うことになります。

葬儀費用の場合は、引き出したことではなく、葬式費用を財産から差し引けることで税額が下がります。おろしたかどうかは関係ないんですね。

父の財産8,000万円のうち3,000万円を引き出した後の行き先を4つに分け、相続税の総額を並べた分岐表

兄弟の間ではどんな問題が起きる?

税金よりやっかいなのが、家族の間の問題です。例えば、親と同居していた長男が預金をおろして管理していたケースを考えてみましょう。

「通帳を見たら、亡くなる前に何百万円も引き出されているけど、何に使ったの?」「介護や入院の費用に使ったはず。でも、領収書は取っていない」

こうなると、ほかの兄弟から使い込みを疑われ、遺産分割の話し合いが進まなくなります。まとまらなければ家庭裁判所の調停に進むこともあります。

『親に頼まれておろしただけなのに』という場合でも、使い道を説明できる記録がないと苦しくなります。おろすなら、何に使ったかを残しておくことがここでは大事です。

もう一つ、亡くなった後の引き出しにも注意が要ります。借金があって相続放棄を考えている場合、親の預金を使ってしまうと単純承認とみなされ、放棄できなくなることがあるんです。

親の預金をおろす前に確認すること
  • 引き出したお金の使い道を、領収書やメモで残す
  • ほかの兄弟にも、引き出すことと使い道を伝えておく
  • 生活費以外でまとまった額を子に渡すなら、贈与として申告する
  • 亡くなった後の葬儀費用は、仮払い制度(1金融機関150万円まで)も使える
  • 相続放棄の可能性があるなら、親の預金に手を付けない

引き出しの記録が残っていない、兄弟の間で使い道の説明が要りそう、申告期限が近い。こんなケースは、口座の出入りを税理士に整理してもらうと、申告の漏れも家族への説明も進めやすくなります。

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相続税がかかりそう、土地や自宅がある、相続人が多い、期限が近いといったケースでは、相続税に詳しい税理士に早めに相談すると安心です。税理士ドットコムなら、全国7,500名以上の登録税理士から相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。

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渡すなら正しい形で、という方は親から子へお金を渡す場面別の対策や名義預金を解約しても税金を免れない理由をあわせて読んでみてください。

よくある質問

口座が凍結されたら、葬儀費用はどう払えばいいですか?

預貯金の仮払い制度を使えば、1つの金融機関ごとに「亡くなった時の預金額の3分の1に、その人の法定相続分をかけた額」まで、上限150万円で単独で払い戻せます。

タンス預金も相続税の申告に入れる必要がありますか?

入れる必要があります。家に置いてある現金も、亡くなった日に持っていた財産です。金額を数えて記録しておきましょう。

生前におろした分を、亡くなった後に兄弟で分けてもいいですか?

相続財産として遺産分割の話し合いに入れて分けることになります。分け方が決まったら、遺産分割協議書に現金の分も書いておくと、後でもめにくくなります。

まとめ

この記事の要点
  • 生前に預金をおろしても、現金として相続財産に入り、相続税は減らない
  • 子に渡せば贈与になり、贈与税と相続前の足し戻しの対象になる
  • 父の財産8,000万円・母と子2人なら、おろしても相続税の総額は350万円のまま
  • 使い道の記録がないと、兄弟から使い込みを疑われやすい
  • 亡くなった後の葬儀費用は、仮払い制度(上限150万円)も使える
相続ケース案内

相続ケース案内 編集部

家族構成や財産の状況ごとに、相続・相続税がどうなるかを公的機関の公開情報をもとに解説しています。 公式サイト

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