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何年も親の介護をしてきたのに、遠くに住んでほとんど顔を出さなかった兄弟と遺産が同じ。そう聞くと、納得できないですよね。
結論から言うと、法律の取り分(法定相続分)は、介護をしたかどうかでは変わりません。ただ、介護の中身によっては「寄与分」として上乗せを求められます。話し合いで多めに分けることも、もちろんできます。
この記事では、介護の仕方ごとに取り分が変わるか、変えるために何を準備すればいいかが分かります。
介護した妹と、しなかった兄。遺産は同じになるの?
何もしなければ、介護した妹もしなかった兄も2分の1ずつです。妹が仕事を辞めて無償で長く介護し、親がヘルパー代などを払わずに済んだようなケースなら、寄与分として上乗せを求められます。ときどき通って身の回りを手伝った程度だと、家族として当然の範囲と見られ、認められにくいのが実際のところです。
例えば、母が先に亡くなり、父の遺産を兄と妹が相続するケースで、介護の仕方ごとに並べてみます。
| ケース | 取り分が増える見込み | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 妹が同居し、仕事を辞めて数年間ほぼ毎日介護。報酬は受け取っていない | 寄与分を主張しやすい | 長い期間・無償・付きっきり、という事情がそろっている |
| 妹が週末だけ通って買い物や通院に付き添った | 認められにくい | 親子として通常期待される範囲と見られやすい |
| 介護したのは兄の妻(相続人ではない) | 兄の妻が「特別寄与料」を請求できる | 請求期限が短い(知った時から6か月・相続開始から1年) |
| 妹は介護したが、親の年金から毎月お金を受け取っていた | 主張は弱くなる | 無償でなければ、その分は差し引いて考えられる |
ポイントは、介護の「量」より「親の財産を減らさずに済んだか」です。ここが大事なところなんです。
寄与分が認められると、取り分はどのくらい変わる?
寄与分は、まず遺産から差し引き、残りを法定相続分で分け、介護した人に寄与分を上乗せする形で計算します。
例えば、遺産6,000万円を兄と妹で分けるケースで、話し合いで妹の寄与分を600万円と決めた場合です。
| 計算の流れ | 金額 |
|---|---|
| 遺産の合計 | 6,000万円 |
| 寄与分を差し引く | 6,000万円 − 600万円 = 5,400万円 |
| 2分の1ずつに分ける | 1人2,700万円 |
| 妹の取り分(寄与分を上乗せ) | 2,700万円 + 600万円 = 3,300万円 |
| 兄の取り分 | 2,700万円 |
600万円という数字は、説明のための例です。実際の寄与分は、介護の日数や、ヘルパーなどに頼んだらいくらかかったかを目安に、話し合いや調停で決めていきます。
相続税も見ておきます。このケースの基礎控除は4,200万円で、相続税の総額は180万円です。取り分に応じて按分すると、妹が99万円、兄が81万円になります。

兄から『介護は当たり前』と言われたら
話し合いの場で、兄から「親の面倒を見るのは子どもとして当然だろう」と言われることも。
そう言われると、言い返しにくいですよね。ただ、気持ちの話でぶつかるより、記録で見せる方が話は進みます。
- 介護日誌やカレンダーのメモ(いつ、何をしたか)
- 要介護認定の通知や、ケアマネジャーとのやり取り
- 介護のために仕事を辞めた・減らしたことが分かる書類
- 親のために立て替えたお金の領収書
- デイサービスや施設を使わずに済んだ期間の分かるもの
例えば、こんなやり取りになることがあります。
「介護って言っても、同じ家に住んでたんだから当たり前じゃないか」
「3年間、毎日の食事と入浴とおむつ替えをしてた。ヘルパーさんを頼んでいたら、その分の費用がかかっていたはずだよ」
具体的な中身とお金で話すと、相手も考えやすくなります。
長男の妻が介護していたケースは?
親の介護を、実際には長男の妻(お嫁さん)が担っていた、という家も多いはずです。
長男の妻は相続人ではないので、寄与分は主張できません。その代わり、2019年7月1日から「特別寄与料」として、相続人にお金を請求できるようになりました。
| 比べる点 | 寄与分 | 特別寄与料 |
|---|---|---|
| 主張できる人 | 相続人(子など) | 相続人でない親族(長男の妻など) |
| 求める相手 | 遺産分割の中で、ほかの相続人に | 相続人に対してお金で |
| 期限 | 相続開始から10年を過ぎると原則主張できない | 相続の開始と相続人を知った時から6か月、相続開始から1年 |
特別寄与料は期限がとても短いので、四十九日を待っているうちに過ぎてしまうことも。請求するかもしれないなら、早めに家族で話しておきましょう。
介護していた側が、逆に疑われることも
介護をしていた子は、親の通帳やキャッシュカードを預かっていることが多いですよね。すると今度は、介護しなかった兄弟から「親のお金を使い込んだのでは?」と言われることがあります。
『こっちは必死で面倒を見ていたのに…』と悔しくなる場面です。こうならないためにも、親のお金で払ったものは領収書を取っておき、簡単な出納メモを付けておきましょう。
疑われた時にどんな資料で説明すればいいかは、兄弟が親の財産を隠しているかもしれない時の調べ方を、調べる側の目線で読んでみると分かりやすいです。
親が元気なうちにできること
亡くなった後に寄与分を認めてもらうのは、記録があっても簡単ではありません。いちばん確かなのは、親が元気なうちに意思を形にしておくことです。
- 遺言書で、介護してくれた子に多めに残すと書いてもらう
- 理由を「付言事項」として書いてもらう(兄弟の納得感が違う)
- 介護の対価として、毎月お金を受け取る約束をしておく
遺言で多めに残す場合も、ほかの兄弟の遺留分には気をつけたいところです。書き方の文例は遺言書の書き方をケースで学ぶ、遺留分の金額は遺留分の金額をケース別に計算した記事で確認できます。
もう1つ注意したいのが期限です。2023年4月1日施行の改正民法で、相続開始から10年を過ぎると、寄与分を原則主張できなくなりました。『そのうち話そう』と先送りにしないことが大事です。
取り分で話がまとまらず、相続税の期限も近い人へ
寄与分の話し合いが長引いても、相続税の申告期限(亡くなった日の翌日から10か月以内)は待ってくれません。まとまらない時は、法定相続分で仮に申告し、分け方が決まった後で直す方法があります。
兄弟の言い分が割れている・遺産に土地がある・期限が近い、というケースは、相続税にくわしい税理士に計算と手続きを任せると、家族は話し合いに集中しやすくなります。
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よくある質問
介護した分を、時給で計算して請求できますか?
寄与分は時給をそのまま足すものではありません。ヘルパーなどに頼んだ場合の費用を目安にしつつ、家族としての扶養の範囲を差し引いて考えるのが一般的です。金額は話し合いか、家庭裁判所の調停・審判で決まります。
介護しなかった兄の取り分を0にできますか?
寄与分を認めても、兄の取り分が0になるわけではありません。遺言で兄に何も残さないとしても、兄には遺留分があります。
寄与分は調停で決めてもらえますか?
話し合いでまとまらなければ、遺産分割調停の中で主張できます。それでも決まらなければ、家庭裁判所が審判で判断します。
まとめ
- 介護をしても、法定相続分は自動では変わらない
- 長く無償で付きっきり、親の出費が減ったケースなら寄与分を主張しやすい
- 主張するなら記録とお金の目安で話す
- 長男の妻などは特別寄与料。期限は6か月・1年と短い
- 寄与分は相続開始から10年を過ぎると原則主張できない




