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『遺産はいらないから、話し合いから早く抜けたい』『実家を継ぐ兄に自分の分をまとめて渡したい』。そんな時に出てくるのが「相続分の譲渡」ですよね。
結論から言うと、相続分の譲渡は遺産分割が終わる前なら、兄弟にも第三者にもできます。ただ、誰に譲るかで注意点がかなり変わります。この記事では、譲る相手ごとにどうなるかを見ていきます。
兄に自分の相続分を譲ると、どうなる?
例えば、父が亡くなり相続人が兄・弟・妹の3人で、妹が自分の相続分(3分の1)を兄に無償で譲るケースです。兄の取り分は3分の2になり、遺産分割の話し合いは兄と弟の2人で進めます。妹は話し合いから抜けられますが、父に借金があった場合、貸した側からの請求までは消えません。
相続分の譲渡とは、遺産全体に対する自分の取り分(割合)を、まとめて誰かに渡すことです。「預金だけ」「土地だけ」ではなく、割合ごと渡すのがポイントなんです。
譲った人は遺産分割の当事者ではなくなり、譲り受けた人が代わりに話し合いに加わります。
相手によって何が違う?ケース別の比較
『兄に譲るのも、知らない人に売るのも同じでは?』と思うかもしれません。実は、相手で結果が大きく変わります。
| ケース | 結論 | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 兄弟に無償で譲る | 話し合いから抜けられる | 兄弟の取り分が増える。譲った人に代金は入らない |
| 兄弟にお金をもらって譲る | 取り分を早く現金化できる | 受け取ったお金の税金の扱いを確認しておく |
| 第三者(業者など)に売る | 現金化できるが揉めやすい | ほかの相続人は1か月以内なら代金と費用を払って取り戻せる |
| 父に借金がある | 借金は譲っても残る | 貸した側には法定相続分で返す義務を負ったまま |

第三者に売る時は「取戻し」に注意
相続分を相続人以外に譲ると、ほかの相続人は、その価額と費用を払って相続分を取り戻せます。民法905条の「相続分の取戻権」で、譲渡から1か月以内に使う必要があります。条文はe-Gov法令検索の民法で確認できます。
知らない人が話し合いに加わると、家族はとまどいますよね。こんなやりとりになりがちです。
「急に会社の人から、実家の分け方の話をしたいと連絡が来たんだけど」
「妹が自分の分を売ったらしい。何も聞いていないよ」
第三者に売る前には、まず兄弟に「買い取る気はあるか」を聞いておくと、後のトラブルを避けやすくなります。
相続放棄や「相続分の放棄」とはどう違う?
ここは混同しやすいところです。似た言葉が3つあるので、表で比べておきますね。
| 比べる点 | 相続分の譲渡 | 相続分の放棄 | 相続放棄 |
|---|---|---|---|
| 手続き | 当事者間の書面でできる | 他の相続人への意思表示 | 家庭裁判所へ申述 |
| 期限 | 遺産分割が終わる前まで | 遺産分割が終わる前まで | 相続を知った時から3か月以内 |
| 取り分の行き先 | 譲った相手に渡る | ほかの相続人に割合で広がる | 初めから相続人でなかったことになる |
| 借金 | 貸した側には残る | 貸した側には残る | 引き継がない |
『借金を引き継ぎたくない』のが目的なら、相続分の譲渡ではなく相続放棄を考えましょう。期限は3か月なので、急ぐ必要があります。
一方、プラスの財産だけで、特定の兄弟に渡したいなら譲渡が向いています。放棄だと、取り分が誰に行くかを選べないからです。
相続分譲渡証明書はどう書く?危険はない?
相続分の譲渡に決まった書式はありません。よく使うのは「相続分譲渡証書」や「相続分譲渡証明書」と呼ばれる書面です。
- 亡くなった人の氏名・死亡日・最後の住所
- 譲る人と譲り受ける人の氏名・住所
- 相続分の全部を譲るのか、一部なのか
- 無償か有償か(有償なら金額と支払い方法)
- 日付と、譲る人の署名・実印の押印(印鑑証明書を添える)
ネットのひな形をそのまま使って、実印を押してしまうのは危ないことも。『よく読まずにハンコを押したら、思っていたより多くを渡していた』という声は少なくありません。
特に、遺産の中身をよく知らないまま譲るのは避けましょう。財産目録を見せてもらい、何を手放すのかを確かめてから署名してみてください。
税金はどうなる?
相続分を譲っても、相続人の人数は変わりません。相続税の基礎控除も、譲渡前と同じ人数で計算します。
相続人どうしで無償で譲った時は、譲り受けた人が相続で取得したものとして相続税を計算するのが一般的です。お金をもらって譲った時や第三者に売った時は、譲った人に相続税や所得税がかかることがあります。要件や扱いは個別に変わるので、税理士に確認しておきましょう。
遺産分割がまとまらないまま申告期限が近づいている時は、遺産分割がまとまらないまま申告する時の注意点もあわせて読んでみてください。譲るか、遺留分を主張するかで迷う時は遺産を譲った方が良いケースと譲らない方が良いケースが参考になります。
譲渡でお金のやりとりがある、相続人の中に第三者が入りそう。そんなケースは、相続税の計算と申告を税理士にまとめて任せると、税金の取りこぼしを防げます。
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よくある質問
相続分の譲渡はいつまでできますか?
遺産分割が終わる前までです。分割が終わった後は、取得した財産を個別に贈与や売買で渡す形になり、贈与税などの扱いが変わります。
相続分を譲れば、親の借金も払わなくてよくなりますか?
いいえ、貸した側に対しては法定相続分で返す義務が残ります。借金を引き継ぎたくない時は、3か月以内に家庭裁判所へ相続放棄を申述します。
第三者に相続分を売ったら、兄弟は何かできますか?
ほかの相続人は、価額と費用を払って相続分を取り戻せます。譲渡から1か月以内に使う必要があります。
まとめ
- 相続分の譲渡は、遺産分割前に自分の取り分を割合ごと渡す方法
- 兄弟に譲れば話し合いから抜けられ、譲った相手の取り分が増える
- 第三者に売ると、ほかの相続人は1か月以内なら取り戻せる
- 借金は譲渡しても貸した側には残る。借金を避けたいなら相続放棄
- 譲渡証明書は財産の中身を確かめてから署名し、税金の扱いも確認する





