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父の遺産を調べたら、銀行からの借入金が残っていた。『実家を継ぐ長男が借金も引き受ける、と協議書に書けば終わり?』と考えている方も多いはずです。
結論から言うと、協議書で負担者を決めることはできますが、それだけでは銀行など貸した側には通じません。この記事では、借入金を1人が引き継ぐケースと住宅ローンのケースの文例、それに注意点を見ていきます。
協議書に「長男が払う」と書けば、他の兄弟は払わなくていい?
父が亡くなり、子2人が相続人で、長男が実家と借入金を引き継ぐケースなら、協議書に「借入金は長男がすべて承継する」と書いたうえで、銀行の承諾を得る手続きをします。承諾が無いと、銀行は次男にも法定相続分の2分の1を請求できます。
ここが大事なところです。借金は、亡くなった時点で法定相続分どおりに各相続人へ分かれます。協議書は相続人どうしの約束なので、貸した側がそれに同意しない限り、次男も請求を受ける立場のままなんです。
そこで協議書には、長男が引き継ぐことと、次男が払った時の取り決めを一緒に書いておきます。
「第〇条 被相続人の〇〇銀行〇〇支店に対する借入金債務(令和〇年〇月〇日時点の残高 金〇〇円)は、相続人〇〇(長男)がすべて承継し、相続人〇〇(次男)はこれを負担しない。
2 長男〇〇は、前項の債務について債権者の承諾を得るための手続きを行う。
3 次男〇〇が前項の債務を債権者に支払った時は、長男〇〇はその額を次男〇〇に支払う。」
3項があれば、銀行から請求された次男は、払った分を長男に求められます。
『兄弟だから大丈夫』と思っていても、相続の後で事情が変わることはあります。書いておくだけで、次男の安心感はずいぶん違います。

住宅ローンやカードの未払いが残っていたら?
借金の種類によって、協議書の書き方や対応が変わります。
住宅ローンは、団体信用生命保険(団信)が付いていれば、亡くなった時に保険で返済されることが多いです。この場合はローンが無くなるので、協議書に負担者を書く必要はありません。
『団信が付いているか分からない』という方は、ローンを組んだ金融機関に問い合わせてみてください。
| ケース | 協議書の書き方 | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 事業や生活費の借入金が残っている | 承継する人と、払った人への支払いの一文を書く | 貸した側の承諾が無いと全員が請求を受ける |
| 団信付きの住宅ローン | 書かなくてよい | 保険で返済されると相続税では差し引けない |
| カードの未払いや入院費 | 誰が払うかと、どの預金から払うかを書く | 金額が小さくても書いておくと揉めにくい |
| 借金がプラスの財産より多そう | 協議書より先に相続放棄を考える | 協議で「負担しない」と決めても放棄にはならない |
「借金のほうが多かったらどうするの?」
「協議書じゃなくて、3か月以内に家庭裁判所で放棄の手続きだね」
相続放棄は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。期限内に財産を使ってしまうと放棄できなくなることもあるので、借金が多そうな時は協議書を作る前に考えておきましょう。
借入金を引くと、相続税はどう変わる?
相続税では、借入金や未払いの税金などの債務を遺産から差し引けます。差し引くのは、実際に債務を負担した人の取得額からです。
例えば、子2人が相続人で、プラスの財産が6,400万円、借入金が400万円のケース。長男が3,400万円の財産と借入金400万円を引き継ぎ、次男が3,000万円を取得すると、2人とも差し引き後は3,000万円になります。
| ケース(子2人) | 課税価格の合計 | 相続税の総額 | 各人の納付税額 |
|---|---|---|---|
| 借入金400万円を差し引いた | 6,000万円 | 180万円 | 長男90万円・次男90万円 |
| 借入金を差し引き忘れた | 6,400万円 | 230万円 | 各115万円 |
基礎控除は3,000万円+600万円×2人で4,200万円です。借入金を差し引くと課税遺産総額は1,800万円、差し引き忘れると2,200万円になり、総額で50万円の差が出ます。
一方で、団信で返済された住宅ローンは、そもそも返す必要がない借金なので差し引けません。
- 借入先・支店・契約番号と、亡くなった日の残高
- 住宅ローンに団信が付いているか
- 亡くなった人が誰かの連帯保証人になっていないか
- 未払いの税金や入院費、カードの利用分
借入金がある、連帯保証が見つかった、借金を引くと基礎控除の前後になる。こんなケースは、協議書を作る前に専門家に見てもらうと判断を誤りにくくなります。
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よくある質問
銀行の承諾はどうやってもらうのですか?
借入先の金融機関に連絡すると、相続人が借入金を引き継ぐための手続きを案内されます。協議書の写しを求められることが多いので、承継する人の名前がはっきり分かるように書いておきましょう。
葬儀費用を立て替えた分も、債務と一緒に書いていいですか?
書けます。ただ、葬儀費用は亡くなった人の借金とは別のものなので、条項は分けて書く方が分かりやすくなります。文例は葬儀費用や立替金の精算を書く時の文例を見てみてください。
借金を引き受ける代わりに、多めに財産をもらってもいいですか?
相続人全員が合意すれば決められます。実家を継ぐ人がその分を他の兄弟にお金で払う形なら、代償分割の協議書の書き方もあわせて見てみてください。
まとめ
- 協議書で負担者を決めても、貸した側の承諾が無ければ全員が請求を受ける
- 承継する人と、他の相続人が払った時に返す一文を書いておく
- 団信で返済される住宅ローンは協議書に書かなくてよく、相続税でも引けない
- 借金が多そうなら、協議書より先に3か月以内の相続放棄を考える
- 6,400万円から借入金400万円を引くと、子2人の納付税額は各90万円になる




