遺産を振り込んでくれない相続人がいる時の催促方法と法的手段

遺産相続で取り分を振り込んでくれない相続人がいる時に、催促の順番と法的手段をケース別に解説する記事のアイキャッチ

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親の預金をまとめて受け取った兄弟が、いつまでたっても自分の取り分を振り込んでくれない。連絡しても返事がない。そんな状況だと、不安になりますよね。

結論から言うと、打てる手は「遺産分割協議書があるかどうか」と「遺言があるかどうか」で変わります。この記事では、ケースごとに催促の順番と、最後に頼れる法的手段を見ていきます。

目次

振り込んでくれない時、まず何を確認する?

このケースの結論

全員がハンコを押した遺産分割協議書があるなら、それを根拠に「約束した額を払って」と請求できます。協議がまだなら、家庭裁判所の遺産分割調停で話を前に進めます。遺言で外されたなら、遺留分侵害額請求です。どの場合も、電話やメールの催促から内容証明へ、そこから家庭裁判所や訴訟へと段階を上げていきます。

『兄に何度言っても、「そのうち」で終わってしまう』。こういう相談はとても多いんです。

ただ、同じ「振り込んでくれない」でも、置かれている状況はけっこう違います。まずは自分がどのケースに当たるかを確かめておきましょう。

ケース今の状況取れる手段注意
協議書あり全員が署名押印済み。預金を代表者が受け取った協議書どおりの支払いを請求。応じなければ訴訟協議そのものをやり直すのではなく、約束の支払いを求める形になる
協議がまだ話し合いに応じない、連絡を無視される遺産分割調停、まとまらなければ審判全員の合意がないと分割できない
遺言で外された遺言で兄に全部、などと書かれていた遺留分侵害額請求(金銭で請求)知った時から1年、相続開始から10年で消滅
ハンコを押さない協議案に同意してもらえない調停で話し合う。相続税は仮の申告で期限を守る申告期限は待ってくれない
遺産を振り込んでくれない時に、協議書の有無・遺言の有無で取れる手段が分かれる様子を示したケース別の分岐表

遺留分の割合そのものは、家族別の遺留分の早見表で確認できます。

協議書があるのに振り込まない場合はどうする?

例えば、父が亡くなり、子3人で預金を3等分すると協議書にハンコを押したケース。手続きの都合で長男がいったん全額を受け取り、そのまま振り込んでくれない、という形です。

この場合、あなたは協議書に書かれた額を受け取る権利を持っています。協議書は「家族で決めた約束」の証拠になるんです。

『家族だから、強く言いにくい』。そう感じるのは自然です。ただ、時間がたつほど使い込まれるおそれもあるので、催促は早めに始めてみてください。

催促の順番
  1. 電話やメールで「いつまでに、いくら、どの口座へ」を具体的に伝える
  2. 期限を過ぎたら、内容証明郵便で支払いを求める
  3. それでも払わなければ、弁護士に相談して支払いを求める訴訟を考える

内容証明郵便は、いつ・誰が・どんな内容を送ったかを郵便局が証明してくれる手紙です。それ自体に強制力はありませんが、「本気で請求している」ことが相手に伝わります。

文面は感情的にせず、事実と金額と期限だけを書きましょう。例えば、こんなイメージです。

「令和○年○月○日付の遺産分割協議書に基づき、私の取得分○○円を、○月○日までに下記口座へお支払いください」

話し合いに応じない・連絡を無視される場合は?

まだ協議がまとまっていない段階で、兄弟が何も言ってこない。電話にも出ない。このケースも少なくありません。

実は、遺産分割に法律上の期限はありません。だからこそ、放っておくと何年も止まってしまうんです。

ただ、2023年4月1日施行の改正民法で、相続開始から10年を過ぎると特別受益や寄与分を主張できなくなりました。原則として法定相続分で分けることになります。親を介護した分を考慮してほしい人ほど、長引かせるのは不利です。

『調停なんて大げさでは?』と思う方もいるはずです。でも、遺産分割調停は家庭裁判所で調停委員が間に入って話し合う手続きです。相手と直接やり合わずに済むのは、気持ちの面でも楽ですよね。

調停でもまとまらなければ、審判に移り、裁判官が分け方を決めます。相手がずっと欠席しても、手続きは前に進みます。

当面のお金が足りない時は?

葬儀代や生活費がすぐ必要なのに、預金が凍結されて下ろせない。そんな時に使えるのが預貯金の仮払い制度です。

1つの金融機関ごとに「相続開始時の預金額 × 3分の1 × あなたの法定相続分」まで、上限150万円で単独で払い戻せます。例えば、子3人で、ある銀行の預金が900万円なら、900万円 × 3分の1 × 3分の1で100万円までです。

ハンコを押してくれない・ハンコ代を求められたら?

協議案に同意してもらえない、あるいは「ハンコを押す代わりにハンコ代をくれ」と言われるケースです。

相続人全員の合意がない協議は成立しません。押さないとどうなるかというと、分割が決まらないまま預金も不動産も動かせない状態が続きます。

それでも、期限のある手続きは待ってくれません。主なものを並べておきます。

手続き期限分割が決まらない時の対応
相続税の申告・納付亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内法定相続分で仮に申告し、申告期限後3年以内の分割見込書を出しておく
相続登記不動産の取得を知った日から3年以内相続人申告登記で義務を果たせる
遺留分侵害額請求知った時から1年・相続開始から10年協議と並行して意思表示しておく

分割見込書を出しておくと、分割がまとまった後に配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を受けられます。

ハンコ代は、法律で決まった金額があるわけではありません。払うかどうか、いくらにするかも話し合い次第です。払う場合は、その分を誰の取り分から出すのかを協議書に書いておきましょう。

遺言で外されて振り込まれない場合は?

「全財産を長男に相続させる」という遺言があり、ほかの兄弟には何も入らないケース。この場合は、協議ではなく遺留分侵害額請求で取り戻します。

2019年7月1日以降の相続では、遺留分は金銭で請求します。不動産を分けてもらうのではなく、お金で払ってもらう仕組みなんです。

請求できる期間は、相続の開始と侵害を知った時から1年です。まずは内容証明郵便で「遺留分侵害額を請求します」と意思表示しておきましょう。金額は後から詰めても大丈夫です。

いくら請求できるかは、遺留分の金額をケース別に計算した記事で確かめられます。兄が勝手に預金を引き出していた疑いがあるなら、長男が独り占めしようとする時の対処もあわせて読んでみてください。

不動産が含まれていて評価額で揉めている、相続税の申告期限が近い、相続人が多くて連絡がつかない人がいる。こんなケースは、相続税の計算と申告を税理士に任せると、話し合いの材料になる数字がそろいます。個別の判断は税理士に確認を。

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よくある質問

内容証明は自分で送れますか?

送れます。郵便局の窓口で手続きでき、電子内容証明もあります。文面は事実・金額・期限だけを書き、感情的な言葉は避けましょう。

遺産分割協議書にハンコを押した後に、内容に不満が出たらやり直せますか?

全員が合意すれば協議をやり直すことはできます。ただ、相手が約束どおりに払わないことを理由に、一方的にやり直すのは難しいと考えておきましょう。まずは約束した支払いを求めます。

相手が調停に出てこないとどうなりますか?

調停は話し合いなので、相手が出てこなければ成立しません。その場合は審判に移り、裁判官が分け方を決めます。

まとめ

この記事の要点
  • 協議書があれば、約束した額の支払いを請求できる
  • 協議がまとまらないなら、遺産分割調停から審判へ進める
  • 遺言で外されたら、遺留分侵害額請求(知った時から1年)
  • 催促は電話・メール、内容証明、裁判所の順で段階を上げる
  • 相続開始から10年を過ぎると特別受益・寄与分を主張できなくなる
相続ケース案内

相続ケース案内 編集部

家族構成や財産の状況ごとに、相続・相続税がどうなるかを公的機関の公開情報をもとに解説しています。 公式サイト

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