老人ホームに入居していた親が亡くなった時の退去と相続の手続き

老人ホームに入居していた親が亡くなった時の退去と相続の手続きを解説する記事のアイキャッチ

当サイトは国税庁・法務省・裁判所などの公開情報をもとに編集部が執筆しています。記事内のサービス紹介には広告を含みます。

施設から連絡があって駆けつけたら、「お部屋はいつまでに空けていただけますか」と聞かれた。悲しむ間もなく退去の話が始まって、戸惑う方も多いはずです。

結論から言うと、退去の期限や費用の精算は施設との契約書で決まっています。そして、入居一時金の返還金は親の財産として相続の対象になるのが基本です。

この記事では、施設の退去で確認すること、返還金や施設費の相続での扱い、空き家になった自宅の相続税をケース別に見ていきます。

目次

施設を退去する時、まず何を確認する?

このケースの結論

退去で最初に見るのは契約書の「退去・明け渡し」「返還金」の項目です。返還金は親の財産として相続人が受け取り、未払いの利用料は相続税の計算で差し引けます。親が要介護認定を受けて入居していて、自宅を誰にも貸していなければ、空き家の自宅にも小規模宅地等の特例が使える可能性があります。

老人ホームの退去は、ふだんの引っ越しとは違って、亡くなった日から短い期間で求められることがあります。期限や日割りの考え方は施設ごとに違うので、まず契約書を開いてみてください。

施設との契約書で確認すること
  • 部屋を明け渡す期限と、それまでの利用料の扱い
  • 入居一時金の返還金があるか、返還先は誰になっているか
  • 原状回復の費用を誰が負担するか
  • 預けていた現金や預り金の精算方法
  • 身元引受人として署名した人の役割

『遺品はとりあえず全部処分してもらえばいいかな』と考えがちですよね。ただ、相続放棄を少しでも考えている時は注意が要ります。財産を処分すると単純承認とみなされ、放棄できなくなることがあるんです。

返還金や未払いの施設費は、相続でどう扱う?

施設を退去すると、お金の出入りがいくつか発生します。相続税の計算での扱いを、ケースごとに見てみましょう。

出てくるお金相続での扱い理由・注意
入居一時金の返還金親の財産として相続財産に入る返還先が契約でどう決まっているかは確認する
亡くなった月までの未払い利用料債務として差し引ける請求書と領収書を残しておく
施設に預けていた現金・預り金親の財産として相続財産に入る精算書で金額を確認する
原状回復費用契約の内容で扱いが変わる金額が大きい時は税理士に確認
葬儀費用差し引ける香典返しや四十九日の法要の費用は含まれない

例えば、返還金の受け取りでこんな話が出ることがあります。

「施設から返還金の振込先を聞かれたんだけど、私の口座でいいのかな?」
「みんなの分だから、いったん受け取って記録を残しておいてくれる?」

代表の人の口座で受け取る時は、いつ・いくら入ったかを記録し、遺産分割で全員の取り分に入れて考えましょう。後から「聞いていない」と言われるのを防げます。

空き家になった自宅の相続税はいくら?

親が施設に入った後、自宅が空き家のまま残っているケースは多いですよね。ここで大事なのが、小規模宅地等の特例です。

国税庁の説明では、親が要介護認定か要支援認定を受けて老人ホームに入居していた場合、入居前に住んでいた自宅を「親が住んでいた家」として扱えます。ただし、入居後に自宅を事業に使ったり、親族以外の人を住まわせたりしていると対象外です。

出典: 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例

もう1つの分かれ目が、誰が自宅を相続するかです。親が1人で暮らしていた家だと、同居の子はいませんよね。その場合は、持ち家のない別居の子(いわゆる家なき子)などの要件を満たす人が相続した時に限られます。

例えば、母が先に亡くなっていて、施設に入っていた父の財産を子が相続するケースです。財産は自宅の土地(330㎡以内・評価額3,000万円)、建物300万円、預貯金2,000万円、入居一時金の返還金200万円で、合計5,500万円とします。

ケース自宅の土地の評価課税価格の合計基礎控除納付額の合計理由・注意
子2人とも持ち家あり3,000万円5,500万円4,200万円130万円自宅を相続する子が要件を満たさない
子2人のうち、持ち家のない子が自宅を相続600万円3,100万円4,200万円0円80%減額。特例を使うので申告は必要
子1人で持ち家あり3,000万円5,500万円3,600万円235万円基礎控除が小さいぶん税額も増える
子1人で持ち家がない600万円3,100万円3,600万円0円要件を満たせば80%減額。申告は必要

『持ち家があるだけで、こんなに違うの?』と驚きますよね。家なき子の要件は、過去に住んだ家の持ち主などまで細かく見られます。要件を満たすかは税理士に確認しておきましょう。

施設に入っていた親の自宅と預貯金・返還金を相続するケースで、子に持ち家があるかどうかで課税価格と納付額が変わる様子を示した内訳バー

退去から相続までの手続きの順番は?

施設の退去と相続の手続きは、同じ時期に重なります。順番を見ておくと慌てずに済みますよ。

老人ホームに入居していた親が亡くなった時の流れ
  1. 死亡届を、死亡を知った日から7日以内に出す(葬儀社が代わりに出すことも多い)
  2. 施設と退去日・精算方法を決め、遺品を引き取る
  3. 年金の受給停止(厚生年金は10日以内・国民年金は14日以内)と、介護保険の資格喪失(14日以内)
  4. 返還金・未払い利用料・預り金の精算書を受け取る
  5. 財産の一覧を作り、相続放棄するかを3か月以内に決める
  6. 遺産分割をして、相続税の申告・納付を10か月以内に済ませる

施設の精算書は、相続税の申告で債務や財産の根拠になります。捨てずに保管しておいてくださいね。

介護保険の負担や、子が立て替えていた施設費をどう扱うかで揉めることもあります。介護を担った側の伝え方は親の介護をした子の立場から考える遺産分割での伝え方で詳しく書いています。

税理士に頼んだ方がいいのはどんなケース?

自宅が空き家になっていて、特例が使えるかどうかで税額が大きく変わる。これは自分で判断しにくいところです。

例えば、親が施設に入った後に自宅を一時的に貸していた、子の持ち家の状況が微妙、返還金や施設費の精算が複雑、というケースは税理士に頼むと楽です。小規模宅地等の特例の経験がある税理士なら、要件の確認から申告までまとめて任せられます。

税理士ドットコム

わが家のケースは、相続に強い税理士に聞くのが近道

相続税がかかりそう、土地や自宅がある、相続人が多い、期限が近いといったケースでは、相続税に詳しい税理士に早めに相談すると安心です。税理士ドットコムなら、全国7,500名以上の登録税理士から相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。

紹介料無料税理士ドットコムで相続に強い税理士を紹介してもらう

(税理士ドットコムの紹介ページに移動します・24時間365日受付)

実家を売るか持ち続けるかで迷う時は、不動産を相続したら何から始めるかのケース別解説も参考にしてみてください。遠方に住んでいて施設や実家に何度も通えない方は、遠く離れて住む子が相続手続きを進める工夫も役に立ちます。

よくある質問

入居一時金の返還金は、受け取った人だけのものになりますか?

返還金は基本的に親の財産として相続財産に入り、遺産分割の対象になります。契約で返還先がどう決まっているかによって扱いが変わることもあるので、契約書を確認しておきましょう。

要介護認定を受けずに老人ホームに入っていた場合、自宅の特例は使えませんか?

国税庁の説明では、要介護認定か要支援認定などを受けていたことが条件になっています。認定の時期も含めて、税理士に確認してみてください。

施設の遺品の中に通帳が見つかりました。どうすればいいですか?

遺産の一覧に加え、残高証明書を取り寄せて相続開始日の残高を確認しておきましょう。勝手に引き出すと、ほかの相続人とのトラブルや相続放棄への影響が出ることがあります。

まとめ

この記事の要点
  • 退去の期限や精算は施設との契約書で決まる。まず契約書を確認する
  • 入居一時金の返還金は親の財産として相続財産に入るのが基本
  • 未払いの利用料は債務として相続税の計算で差し引ける
  • 要介護・要支援認定を受けて入居し、自宅を貸していなければ自宅の特例が使える可能性がある
  • 自宅5,500万円のケースでは、持ち家のある子2人で130万円、要件を満たす子が相続すれば0円(申告は必要)
相続ケース案内

相続ケース案内 編集部

家族構成や財産の状況ごとに、相続・相続税がどうなるかを公的機関の公開情報をもとに解説しています。 公式サイト

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次