遺言書で一人に相続させたい時の書き方|妻へ・長男へのケース文例

遺言書で一人に全財産を相続させる書き方を、妻へ・長男へのケース別文例で紹介する記事のアイキャッチ

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『全部を妻に残したい』『家を継ぐ長男に全部まとめたい』。そう考えて、遺言書の書き方を調べている方も多いはずです。

結論から言うと、全財産を一人に相続させる遺言は短い文で書けます。ただし、渡す相手と家族構成によって、ほかの家族から遺留分を求められるかどうかが変わります。この記事では、3つのケースの文例と注意点を見ていきます。

目次

一人に全財産を相続させる遺言は書ける?

このケースではこうなる

書けます。「遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻(氏名)に相続させる。」の1文が中心です。子のいない夫婦で、相続人が妻と夫の兄弟だけなら、兄弟には遺留分がないので、この遺言で妻にすべて渡せます。子がいる場合は、子が遺留分としてお金を求めることができる点に注意が要ります。

ケースごとに、遺言がどこまで効くかを先に見ておきましょう。

ケース渡す相手ほかの相続人の遺留分
子のいない夫婦(親は他界、夫の兄弟がいる)妻兄弟姉妹には遺留分がないので、妻がすべて受け取れる
妻と子2人がいる妻子1人あたり遺産の8分の1を求められる
妻は他界、子3人がいる長男次男・三男は1人あたり遺産の6分の1を求められる

遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められる最低限の取り分です。全体の遺留分は遺産の2分の1(親だけが相続人なら3分の1)で、それを法定相続分で分けます。

家族構成ごとに、一人に全財産を相続させた時のほかの相続人の遺留分の割合を示した家系図

妻に全財産を渡したい時の文例

子のいない夫婦が「妻に全財産」と書くケース

子どもがいない夫婦で、夫の両親はすでに亡くなり、夫に兄弟が2人いるケースです。

遺言がないと、妻の法定相続分は4分の3、残り4分の1を夫の兄弟が分けます。実家の兄弟と、残された妻が話し合うことになるんです。

『義理の兄弟とお金の話をするのは気が重い』という方は多いですよね。兄弟姉妹には遺留分がないので、遺言を残せば妻がすべて受け取れます。

文例1:子のいない夫婦で妻に全財産

遺言書

第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻(氏名・生年月日)に相続させる。

第2条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、妻(氏名)を指定する。

令和(年)年(月)月(日)日
住所(遺言者の住所)
遺言者(氏名) 印

相続税も見ておきます。遺産5,000万円の場合、法定相続人は妻と兄弟2人の3人なので基礎控除は4,800万円です。課税遺産総額は200万円、相続税の総額は20万円です。

妻が全部を受け取ると配偶者の税額軽減で納付額は0円になります。ただし、軽減を使うには相続税の申告が要ります。0円でも申告が必要になる点は覚えておきましょう。

妻と子がいて「妻に全財産」と書くケース

次は、妻と子2人がいて、遺産8,000万円を全部妻に残したいケースです。

この場合、子1人あたりの遺留分は遺産の8分の1で、1,000万円です。子が求めれば、妻はその分のお金を払うことになります。

子が納得しているなら問題はありません。付言事項で理由を書いておくと、気持ちが伝わりやすくなります。

文例2:子がいる家族で妻に全財産(予備的な一文と付言つき)

第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻(氏名・生年月日)に相続させる。

第2条 妻が遺言者の死亡以前に死亡したときは、前条の財産を、長男(氏名・生年月日)及び長女(氏名・生年月日)に2分の1ずつ相続させる。

付言事項 自宅で暮らす妻の生活を第一に考えて、この遺言を書きました。子どもたちには母を支えてほしいと思っています。

第2条のような「先に亡くなった時の受け取り手」を決める一文を、予備的な遺言と言います。これがないと、妻が先に亡くなった時にその部分の遺言が使えなくなり、子同士の話し合いに戻ってしまいます。

相続税の面では、遺産8,000万円・相続人3人なら、相続税の総額は350万円です。妻が全部を取ると配偶者の税額軽減で納付額は0円になります。

ただ、妻が亡くなった時の次の相続(二次相続)では、配偶者の軽減が使えません。今回の相続だけで判断せず、税理士に二次相続まで試算してもらうと安心です。

妻は他界、長男に全財産を継がせるケース

3つ目は、妻はすでに亡くなり、子3人のうち家業や実家を継ぐ長男に全財産を渡したいケースです。

遺産6,000万円なら、次男・三男の遺留分は1人あたり遺産の6分の1で、1,000万円ずつです。

計算長男次男三男
遺言での取得6,000万円なしなし
遺留分(6,000万円 × 2分の1 × 3分の1)なし1,000万円1,000万円
相続税(総額120万円)120万円なしなし

相続人3人で基礎控除は4,800万円、課税遺産総額1,200万円、相続税の総額は120万円です。長男が全部を取得すれば、120万円は長男の負担になります。

次男と三男が遺留分を求めた場合は、長男がお金で払うことになります。遺留分侵害額請求は2019年7月1日以降、金銭での請求に変わりました。

『じゃあ、どうしたら揉めずに長男へ継がせられるの?』と思いますよね。よく取られる工夫はこんなところです。

長男へ一人に相続させる時に考えておきたいこと
  • 長男が遺留分を払えるお金を持てるか(生命保険の受取人を長男にしておく等)
  • 次男・三男に、遺留分くらいは渡す遺言にしておくか
  • 付言事項で、長男に継がせる理由を書いておくか
  • 遺言執行者を誰にするか

遺留分の金額を家族構成ごとに確かめたい方は、遺留分がいくらになるかのケース別計算を見てみてください。

自筆で書く時に気をつけたいこと

自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自分で書き、押印します。財産目録だけはパソコンや通帳のコピーでもよく、各ページに署名押印をします(2019年1月13日以降)。

「一切の財産を相続させる」なら目録は不要ですが、特定の財産だけ渡したい時は目録で特定しておくと手続きが楽になります。

書き方手間検認
自筆証書遺言を自宅で保管自分だけで書ける家庭裁判所の検認が必要(収入印紙800円/通)
自筆証書遺言を法務局で保管(2020年7月10日開始)手数料1通3,900円検認不要
公正証書遺言公証役場で作成、証人2人が必要検認不要

「渡す」「任せる」のようなあいまいな言葉は避け、「相続させる」と書くのが基本です。相手が相続人でない孫や子の配偶者なら「遺贈する」と書きます。違いは遺贈と相続はどっちになるかで詳しく見ています。

遺産に不動産が多い、遺留分の支払いまで考えたい、二次相続の税金も知りたい。こうしたケースは、税理士に相続税と遺留分をまとめて試算してもらうと、遺言の中身を決めやすくなります。

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よくある質問

「全財産を妻に相続させる」と書けば、子は何も言えませんか?

子には遺留分があるので、子が求めれば妻はその分をお金で払うことになります。子が求めなければ、遺言どおり妻がすべて受け取ります。

兄弟がいる場合、一人に全部を相続させると兄弟から不満は出ませんか?

子のいない夫婦で相続人が配偶者と兄弟姉妹なら、兄弟姉妹には遺留分がないので、遺言どおりになります。

遺言書に書いた財産を、生前に売ってしまったらどうなりますか?

売った財産の部分は、遺言を撤回したものとして扱われます。「一切の財産」と書いておけば、残った財産全体が対象になります。

まとめ

この記事の要点
  • 一人に全財産を渡す遺言は「一切の財産を(氏名)に相続させる」の1文が中心
  • 子のいない夫婦で相続人が配偶者と兄弟なら、兄弟に遺留分はない
  • 子がいる場合は、遺留分としてお金を求められることがある
  • 先に亡くなった時の受け取り手を決める予備的な一文を入れておく
  • 自筆は検認が必要。法務局保管や公正証書なら検認は不要
相続ケース案内

相続ケース案内 編集部

家族構成や財産の状況ごとに、相続・相続税がどうなるかを公的機関の公開情報をもとに解説しています。 公式サイト

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