母が施設に入っている時に父が亡くなった場合の相続

母が施設に入っている中で父が亡くなったケースの相続を、母の判断の可否と実家の取得者別に紹介する記事のアイキャッチ

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母はすでに施設で暮らしていて、実家には父が1人で住んでいた。その父が亡くなった時、『母は施設にいるし、相続の話し合いはどうすれば?』と戸惑う方も多いですよね。

結論から言うと、施設にいても母は相続人で、遺産分割の話し合いには母も加わる必要があります。

この記事では、母が自分で判断できるかどうかで変わる進め方と、実家を誰が取得すると相続税がどう変わるかまで分かります。

目次

母が施設にいる時に父が亡くなったら、相続はどうなる?

このケースの結論

父が亡くなると、施設にいる母(配偶者)と子どもたちが相続人です。母の法定相続分は2分の1で、遺産分割協議は母を含めた全員の合意が要ります。母が自分で判断できるなら施設で署名をもらって進め、判断が難しいなら家庭裁判所に成年後見人を選んでもらう手続きが先になります。実家は、母が取得すると小規模宅地等の特例で相続税が大きく下がることがあります。

配偶者は、どこに住んでいても常に相続人です。施設に入っていることで、母の相続分が減ることはありません。

例えば、父・母・子2人の家族なら、相続人は母と子2人の3人です。法定相続分は母が2分の1、子が4分の1ずつになります。

『母はもう家に戻れないし、子どもだけで決めてもいいのでは?』と考えてしまいますよね。ただ、母を抜いた遺産分割協議は無効です。銀行の解約や相続登記でも、母の署名と実印が求められます。

母が自分で判断できるかどうかで、進め方が変わる

母が施設にいる相続で、最初に確かめたいのは「母が相続の内容を理解して、自分で決められるか」です。ここで進め方が分かれます。

ケース進め方理由・注意
母が内容を理解して自分で判断できる子が施設に書類を持っていき、説明して署名・押印をもらう母の実印と印鑑証明書が要る。施設に預けている場合は取り出し方を確認
母の判断する力が衰えていて、内容を理解するのが難しい家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立て、後見人が母の代わりに協議に加わる子が代わりに署名するのは不可。後見人は母の利益を守る立場で協議する
父が遺言書を残していた遺言のとおりに名義を変える(協議は要らない)自筆の遺言は家庭裁判所の検認が要る。法務局に預けていた遺言は不要

ここが大事なところです。母の判断する力が衰えている時に、子が母の代わりに署名して協議書を作ることはできません。後から協議が無効になるおそれがあります。

成年後見人が付くと、後見人は母の利益を守る立場で話し合いに加わります。母の取り分を大きく減らす分け方は、認められにくいと考えておきましょう。

母が判断できる場合の進め方

母が自分で判断できるなら、施設と相談しながら次の順に進めてみてください。

施設にいる母と遺産分割を進める流れ
  1. 父の財産と、相続人(母・子)を書き出す
  2. 子どもたちで分け方の案を作り、施設の面会時間に母へ説明する
  3. 母の考え(施設費用にいくら残したいか等)を聞いて、案を直す
  4. 遺産分割協議書を作り、母と子全員が署名し、実印を押す
  5. 銀行の解約、相続登記、相続税の申告(亡くなった日の翌日から10か月以内)を進める

説明する時は、一度に全部を伝えようとしないのがコツです。

「お父さんの預金は、お母さんの施設のお金に回そうと思うんだけど、どうかな」
「それでいいよ。家はあなたたちで決めてちょうだい」

こんなふうに、母が気にしていることから話すと、話がまとまりやすいはずです。

当面の施設費用や葬儀代が必要な時

遺産分割が終わるまで、父の預金は原則として引き出せません。ただ、預貯金の仮払い制度があり、相続人は1つの金融機関ごとに「相続開始時の預金額 × 3分の1 × その人の法定相続分」、上限150万円まで単独で払い戻しできます。

例えば、父の口座に600万円あれば、母は600万円 × 3分の1 × 2分の1 = 100万円まで、他の相続人の同意なしで引き出せます。

施設に住む母と実家、誰が何を取ると税金はどう変わる?

分け方で悩みやすいのが、空き家になった実家です。母はもう住まないので『実家は子どもが取って、母は預金を』と考える家も多いですよね。

実は、誰が実家を取得するかで、相続税が大きく変わることがあります。

例えば、父が亡くなり、母と子2人が相続人のケース。遺産は8,000万円で、内訳は実家3,000万円(土地2,000万円・建物1,000万円)と預金5,000万円。子2人は別に持ち家に住んでいるとします。

計算の流れ金額
課税価格の合計8,000万円
基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 3人)4,800万円
課税遺産総額3,200万円
法定相続分で分けた取得金額母1,600万円・子各800万円
相続税の総額350万円

この総額を、実際の取り方で分けます。3つの分け方を比べてみます。

ケース母の取得子1人の取得子1人の納付額家族の納付額の合計
法定相続分どおり(母2分の1)4,000万円2,000万円87万5,000円175万円
母が預金5,000万円、子2人が実家5,000万円1,500万円65万6,200円131万2,400円
母が実家と預金2,000万円、子が預金1,500万円ずつ(特例あり)3,400万円1,500万円37万5,000円75万円

3つ目のケースでは、母が実家を取得して小規模宅地等の特例を使い、土地2,000万円の評価を80%減らしています。課税価格の合計は6,400万円、相続税の総額は160万円になります。

子が取得する場合、子が父と同居していなかったり、持ち家に住んでいたりすると、特例の要件を満たさないことが多いんです。配偶者が取得する時は、要件のハードルが下がります。使えるかどうかは税理士に確認してみてください。

どのケースも、母の納付額は配偶者の税額軽減で0円です。ただ、軽減も特例も、申告しないと受けられません。

父の遺産8,000万円を母と子2人で相続する時、法定相続分どおり・母が預金・母が実家を取得の3ケースで、誰が何を取得し家族の相続税がいくらになるかを並べた分岐表

母の施設費用と二次相続まで考えた分け方

父の相続だけを見ると、母に多く取ってもらうほど今の税金は少なくなります。ただ、母が亡くなった時の相続(二次相続)では、母の財産に配偶者の税額軽減は使えません。

『今の税金が安ければそれでいい』とはいかないところですよね。母の施設費用と、二次相続をセットで考えておきましょう。

分け方を決める前に家族で確かめること
  • 母の施設費用は月いくらか。母の年金と預金で何年まかなえるか
  • 実家に母が戻る見込みはあるか。空き家のままにするか、売るか
  • 母が実家を取得した場合、母が亡くなった時にその実家を誰が引き継ぐか
  • 実家を売る予定なら、売る時期を相続税の申告期限より後にするか

施設費用が続く家では、母に預金を多めに残しておくと安心です。父が亡くなった後の母の生活費から分け方を考える方法は、夫が亡くなった後の妻の生活費から考える遺産の分け方でも紹介しています。

母が取得した実家を、母の相続の時に子2人でどう分けるかも先に話しておきたいところです。実家だけが残るケースは、兄弟2人で実家1軒だけを相続する時の分け方で代償分割・換価分割を比べています。

遺族年金は相続財産に入らない

母が父の遺族年金を受け取る場合、遺族年金は相続税の対象外で、所得税もかかりません。施設費用の見通しを立てる時は、遺族年金も収入に入れて計算してみてください。

父の年金は、亡くなった後の受給停止の届け出が要ります。厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内です。

税理士に頼むと楽なケース

母が施設にいる相続は、母への説明、成年後見の手続き、実家の特例の判断と、子どもが動く場面が多くなります。遺産が基礎控除を超えそうな時や、実家を誰が取得するかで税金を比べたい時は、自分たちだけで抱えるのは大変ですよね。

相続税にくわしい税理士なら、分け方ごとの税額の比較から申告まで一度に頼めます。

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よくある質問

施設にいる母の分を、子が代わりに署名してもいいですか?

できません。母が自分で判断できるなら母本人が署名します。判断が難しい場合は、家庭裁判所に成年後見人を選んでもらい、後見人が母の代わりに協議に加わります。

母が実家を相続した後、実家を売ることはできますか?

母の名義なので、母が判断できれば売れます。ただ、相続税の申告期限より前に売ると小規模宅地等の特例の要件から外れることがあるので、売る時期は税理士に確認しておきましょう。

母がすべてを相続すれば、相続税はかからないのでは?

配偶者の税額軽減で、母の取得分は1億6,000万円か法定相続分のどちらか多い金額まで相続税がかかりません。ただし申告は必要です。また、母が亡くなった時の二次相続では軽減が使えないので、子どもの税金が増えることがあります。

まとめ

この記事の要点
  • 施設にいても母は相続人で、法定相続分は2分の1。協議には母の合意が要る
  • 母が判断できなければ、成年後見人の選任が先。子が代わりに署名はできない
  • 遺産8,000万円・子2人の例では、母が実家を取得して特例を使うと家族の税金は75万円
  • 母の税額軽減も小規模宅地等の特例も、申告しないと受けられない
  • 母の施設費用と二次相続をセットで考えて分け方を決める
相続ケース案内

相続ケース案内 編集部

家族構成や財産の状況ごとに、相続・相続税がどうなるかを公的機関の公開情報をもとに解説しています。 公式サイト

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