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家族で遺産の分け方は決まった。あとは書面にするだけ。そう思って書き始めると、どこまで細かく書けばいいのか手が止まりますよね。
結論から言うと、遺産分割協議書は自分で作れます。決まった書式はなく、誰が何を取得するかがはっきり分かれば、パソコンで作っても手書きでも大丈夫です。
この記事では、よくある4つのケースの例文と、自分で作る時に気をつけたい点が分かります。
遺産分割協議書は自分で作っても大丈夫?
相続人全員が合意していて、財産が預金と自宅くらいなら、遺産分割協議書は自分で作れます。相続人全員が署名し、実印を押して印鑑証明書を添えれば、銀行や法務局の手続きに使えます。相続人に連絡がつかない人がいる、土地の分け方でもめている、という場合は専門家に頼む方が早いこともあります。
自分で作るか、誰かに頼むかは、家の状況で変わります。まずは自分の家がどのケースに近いか見てみてください。
| ケース | 自分で作れる? | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 相続人が配偶者と子だけで、全員が分け方に納得している | 作れる | 例文を下敷きにすれば十分。財産の書き方だけ正確に |
| 1人がすべてを相続し、ほかの人は何も受け取らない | 作れる | 「何も取得しない」ことを全員が分かったうえで署名する |
| 代償金を払う、不動産を売って分けるなど、お金のやり取りがある | 作れるが注意 | 金額と支払期限まで書く。贈与と見られない書き方にする |
| 相続人に未成年者や認知症の人がいる | 自分だけでは難しい | 家庭裁判所で特別代理人や成年後見人を立てる必要が出る |
| 相続人の1人が話し合いに応じない | 作れない | 全員の合意がないと協議書は無効。調停を考える |
『書き方を間違えたら、全部やり直しになるの?』と心配になりますよね。実は、作り直しや追加の協議書で直せることも多いんです。ただ、署名と実印を集め直す手間がかかるので、最初に正確に書いておくのが楽です。

協議書に入れる項目は?最低限これだけ
ケース別の例文に入る前に、どの協議書にも共通して入る項目を押さえておきましょう。
- タイトル(「遺産分割協議書」)
- 亡くなった人の氏名・亡くなった日・最後の住所・本籍
- 相続人全員で協議し、次のとおり分けることに合意した、という一文
- 財産ごとに「誰が取得するか」(不動産は登記簿どおり、預金は口座まで特定)
- 後から見つかった財産の扱い
- 作成日
- 相続人全員の住所・署名・実印
財産の書き方でいちばんつまずきやすいのが、不動産です。住所(住居表示)ではなく、登記簿に書かれた所在・地番・地目・地積、建物なら家屋番号まで写します。
例えば、自宅の住所が「〇〇市〇〇町1丁目2番3号」でも、登記簿の地番は「〇〇町一丁目205番」のように違うことがあります。法務局で登記事項証明書を取って、そのとおりに書き写してみてください。
預金は「〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇」のように、口座が1つに決まる書き方にします。
ケース1:妻が自宅を、子2人が預金を相続する例文
夫が亡くなり、妻と子2人が相続人のケースです。いちばんよく見かける形ですよね。
遺産分割協議書
被相続人 〇〇〇〇(令和〇年〇月〇日死亡)
最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇番地
上記被相続人の相続人全員は、被相続人の遺産について協議した結果、次のとおり分割することに合意した。
1 相続人 〇〇花子(妻)は、次の不動産を取得する。
(土地)所在 〇〇市〇〇町一丁目 地番 205番 地目 宅地 地積 〇〇.〇〇平方メートル
(建物)所在 〇〇市〇〇町一丁目205番地 家屋番号 205番 種類 居宅 構造 木造瓦葺2階建 床面積 1階〇〇.〇〇平方メートル 2階〇〇.〇〇平方メートル
2 相続人 〇〇一郎(長男)および〇〇次郎(次男)は、次の預金をそれぞれ2分の1ずつ取得する。
〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
3 本協議書に記載のない遺産が後日判明した場合は、相続人 〇〇花子が取得する。
以上の協議を証するため、本協議書を3通作成し、各自署名押印のうえ1通ずつ保有する。
令和〇年〇月〇日
(相続人全員の住所・署名・実印)
3の「記載のない遺産」の一文は、入れておくと後で助かります。小さな口座が後から出てきても、全員で集まり直さずに済むからです。
このケースの相続税はいくら?
この分け方だと、相続税にも影響します。課税価格の合計が8,000万円、自宅分と預金分で妻が4分の3、子2人が8分の1ずつ取得したケースで比べてみます。
| 計算の順番 | 金額 |
|---|---|
| 課税価格の合計 | 8,000万円 |
| 基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 3人) | 4,800万円 |
| 課税遺産総額 | 3,200万円 |
| 相続税の総額 | 350万円 |
| 分け方 | 妻の納付額 | 子1人あたりの納付額 | 家族の合計 |
|---|---|---|---|
| 法定相続分どおり(妻1/2・子1/4ずつ) | 0円 | 87万5,000円 | 175万円 |
| 妻3/4・子1/8ずつ(ケース1の形) | 0円 | 43万7,500円 | 87万5,000円 |
妻が多めに取得すると、配偶者の税額軽減で家族の合計は下がります。ただ、妻が亡くなった時の二次相続では軽減が使えないので、目先の税額だけで決めないのが大事なところです。
もう一つ、妻の税額が0円でも、配偶者の税額軽減を使うには申告が必要です。協議書の写しは申告書に添付するので、申告期限(亡くなった日の翌日から10か月以内)に間に合うように作っておきましょう。

ケース2:長男が1人ですべてを相続する例文
母が亡くなり、父はすでに他界、子が3人いるケース。実家に住む長男がすべてを相続し、次男と長女は何も受け取らないと決まった場合です。
1 相続人 〇〇一郎(長男)は、被相続人の次の遺産をすべて取得する。
(1)土地 所在 〇〇市〇〇町 地番 〇〇番 地目 宅地 地積 〇〇.〇〇平方メートル
(2)建物 所在 〇〇市〇〇町〇〇番地 家屋番号 〇〇番
(3)〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
(4)その他本協議書に記載のない一切の遺産
2 相続人 〇〇次郎(次男)および〇〇和子(長女)は、遺産を取得しない。
『何ももらわないなら、相続放棄と同じでは?』と思う方も多いはずです。ただ、ここは違いがあります。
| 比べる点 | 協議書で「取得しない」 | 家庭裁判所で相続放棄 |
|---|---|---|
| 期限 | なし | 相続を知った時から3か月以内 |
| 借金の扱い | 債権者には法定相続分で請求されることがある | 初めから相続人でなかったことになる |
| 費用 | ほぼかからない | 収入印紙800円と郵便切手・戸籍代 |
| 次の順位の人 | 影響なし | 子が全員放棄すると親や兄弟姉妹に回る |
借金がない家なら、協議書で「取得しない」と書く形で十分なことが多いです。借金がありそうな時は、放棄も考えてみてください。
なお、親が遺言書を残していて、その中で全財産の行き先が決まっているなら、協議書はそもそも要りません。遺言がある時の進め方は遺言書がある相続はどう進む?を見てみてください。
ケース3:自宅を継ぐ人が代償金を払う例文
遺産が自宅と少しの預金だけで、子2人で分けたいケースです。自宅を継ぐ長男が、次男にお金を払って釣り合いを取ります。これを代償分割と言います。
例えば、遺産が自宅3,000万円と預金1,000万円、合計4,000万円で、兄弟で半分ずつにしたい場合。長男が自宅と預金を全部取ると4,000万円なので、次男の取り分2,000万円を長男が払います。
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| 遺産の合計(自宅3,000万円 + 預金1,000万円) | 4,000万円 |
| 1人あたりの取り分(2分の1) | 2,000万円 |
| 長男が取得する財産 | 4,000万円 |
| 長男が次男に払う代償金(4,000万円 − 2,000万円) | 2,000万円 |
1 相続人 〇〇一郎(長男)は、次の遺産を取得する。
(1)土地・建物(登記簿どおりに記載)
(2)〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
2 相続人 〇〇一郎は、前項の遺産を取得する代償として、相続人 〇〇次郎に対し、金2,000万円を令和〇年〇月〇日までに、〇〇次郎の指定する口座に振り込む方法により支払う。
ここが大事なところです。代償金は協議書に「遺産を取得する代償として」と書いておきます。書かずに後から兄弟にお金を渡すと、贈与と見られて贈与税の話になるおそれがあるからです。
代償金の額を自宅の評価額で決めるか、売ったらいくらかで決めるかでも、兄弟の受け取り方が変わります。分け方そのものの比べ方は、現物・代償・換価の3つの分け方をケース別に比べるで見られます。
ケース4:協議書を作った後に財産が出てきた時の例文
協議書に判をついた後で、親名義の別の口座が見つかることもありますよね。最初の協議書に「記載のない遺産は〇〇が取得する」と書いていれば、その人が受け取って終わりです。
書いていなかった場合は、見つかった財産だけについて追加の協議書を作ります。
被相続人の遺産のうち、令和〇年〇月〇日付遺産分割協議書に記載のなかった次の遺産について、相続人全員で協議した結果、次のとおり分割することに合意した。
〇〇信用金庫 〇〇支店 定期預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
上記の預金は、相続人 〇〇次郎が取得する。
追加で見つかった財産で遺産の合計が基礎控除を超えたり、相続税の額が増えたりする時は、申告の出し直し(修正申告)も考えます。逆に払いすぎに気づいた時は、原則として申告期限から5年以内なら更正の請求ができます。
自分で作る時に、やり直しになりやすいポイントは?
自分で作った協議書でつまずくのは、たいてい書式ではなく細かい部分です。よくある失敗を並べてみます。
| よくある失敗 | どうなる | 直し方 |
|---|---|---|
| 不動産を住所で書いた | 法務局で登記に使えないことがある | 登記事項証明書どおりに所在・地番を書く |
| 相続人の1人が認印で押した | 銀行・法務局で受け付けてもらえない | 実印で押し直し、印鑑証明書を添える |
| 相続人を1人見落としていた(前妻の子など) | 協議そのものが無効 | 戸籍を出生から死亡まで集めて相続人を確定してからやり直す |
| ページが複数あるのに割印がない | 差し替えを疑われることがある | ページの境目に全員の実印で割印(契印)を押す |
| 代償金の支払期限を書いていない | 支払いが先延ばしになりもめる | 金額・期限・支払方法まで書く |
相続人の確定には、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍が要ります。誰が相続人になるかは、法定相続人の家族図10パターンで先に確かめておくと安心です。2024年3月1日からは、本籍地以外の市区町村窓口でもまとめて請求できる広域交付が始まっています。
法務局で「法定相続情報一覧図の写し」を無料で出してもらうと、銀行ごとに戸籍の束を出し直す手間も省けます。
『この協議書で本当に手続きが通るかな』と不安な時は、提出先の銀行や法務局に事前に見てもらうのも1つの手です。
協議書づくりと相続税の申告、自分でやるのが大変なケース
協議書は自分で作れても、相続税の申告は話が別です。土地の評価や小規模宅地等の特例が使えるかで、税額が大きく変わります。
例えば、こんなケースです。
- 遺産に土地があり、遺産の合計が基礎控除を超えそう
- 妻が多めに取得して、配偶者の税額軽減を使いたい
- 代償金の額を、相続税の評価額で決めたい
- 10か月の申告期限まで、あと数か月しかない
こうした場合は、相続税にくわしい税理士に頼むと、財産の評価から申告書の作成まで一度に進みます。協議書の中身が税額にどう響くかも、事前に確かめられます。
税理士ドットコム
わが家のケースは、相続に強い税理士に聞くのが近道
相続税がかかりそう、土地や自宅がある、相続人が多い、期限が近いといったケースでは、相続税に詳しい税理士に早めに相談すると安心です。税理士ドットコムなら、全国7,500名以上の登録税理士から相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。
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協議書の作成だけを頼みたい時は、行政書士や司法書士も扱っています。不動産の登記まで一緒に任せるなら司法書士が向いています。
よくある質問
遺産分割協議書は手書きでないとだめですか?
パソコンで作っても手書きでも構いません。署名だけは各相続人が自分で書き、実印を押しておくと手続きで困りにくくなります。
相続人が遠方に住んでいて集まれません。どうすればいいですか?
同じ内容の協議書を郵送で回して、1人ずつ署名と押印をしてもらう方法があります。全員分がそろった時点で協議書として使えます。
遺言書があっても遺産分割協議書は必要ですか?
遺言書ですべての財産の行き先が決まっていれば、原則として協議書は要りません。遺言に書かれていない財産がある時や、相続人全員で遺言と違う分け方にする時に作ります。
協議書は何通作ればいいですか?
決まりはありませんが、相続人の人数分を作って各自1通ずつ持つのが一般的です。銀行や法務局には原本を見せて、返してもらうこともできます。
協議書を作った後、内容を変えることはできますか?
相続人全員が合意すれば作り直せます。ただ、一度分けた財産を分け直すと、贈与とみなされて贈与税がかかることがあるので、事前に税理士に確認しておきましょう。
まとめ
- 遺産分割協議書は自分で作れる。決まった書式はなく、手書きでもパソコンでもよい
- 不動産は登記簿どおり、預金は口座番号まで書いて財産を特定する
- 相続人全員の署名と実印、印鑑証明書をそろえる
- 代償金は「取得する代償として」と金額・期限まで書く
- 「記載のない遺産は誰が取得するか」を入れておくと後で助かる





