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親の葬儀代をとりあえず長男が払った。あとで『この分は遺産から返してもらっていいの?』と迷っている方も多いはずです。
結論から言うと、相続人全員が納得すれば、立て替えた葬儀費用は遺産から精算できます。この記事では、兄弟で立て替えたケースを例に、精算の方法と相続税での扱いを見ていきます。
葬儀費用は遺産から払っていい?
父が亡くなり、兄が葬儀費用を立て替えたケースでは、兄弟で話し合って遺産から精算するのが基本です。相続税の計算では、実際に葬儀費用を負担した相続人の取得分から差し引けます。
葬儀費用を誰が払うかは、法律で決まった順番があるわけではありません。喪主が払う、遺産から払う、兄弟で割る。どれにするかは相続人どうしの話し合いで決めます。
ただ、亡くなった人の口座は、銀行が死亡を知ると引き出せなくなります。そこで使えるのが、預貯金の仮払い制度です。
仮払いでは、1つの金融機関ごとに「相続開始時の預金額 × 3分の1 × 自分の法定相続分」まで、上限150万円で、相続人が単独で払い戻しを受けられます。
例えば、父の口座に600万円あり、相続人が子2人なら、600万円 × 3分の1 × 2分の1で100万円です。葬儀代の支払いに間に合わせたい時の手段として覚えておきましょう。
『葬儀代を遺産から払ったら、相続放棄できなくなる?』という心配もありますよね。財産を処分・消費すると、単純承認とみなされて放棄できなくなることがあります。借金がありそうで放棄を考えているなら、遺産に手をつける前に専門家へ確認しておきましょう。
兄が立て替えた葬儀費用はどう精算する?
「葬儀代、兄さんが200万円立て替えてくれたんだよね」
「じゃあ、遺産を分ける時にその分を先に返そうか」
こんなふうに話がまとまれば、精算はむずかしくありません。よくあるのは、遺産分割協議書に「葬儀費用は預金から兄に支払う」と書いておく方法です。
- 葬儀社の請求書と領収書、お寺へのお礼の記録をまとめておく
- 立て替えた金額と、遺産から精算するかどうかを相続人全員で話し合う
- 遺産分割協議書に、葬儀費用を誰がどの財産から受け取るかを書く
- 預金の解約・払い戻しの後に、立て替えた人へ精算する
お寺へのお礼は領収書が出ないこともあります。日付・金額・渡した相手をメモしておくだけでも、あとで説明しやすくなります。
精算の話し合いは、四十九日の前後に兄弟が集まったタイミングで済ませる方も多いです。金額の一覧を紙1枚にまとめて見せると、話が早く進みます。
ここが大事なところです。精算するかどうかで、相続税の計算上「誰が葬儀費用を負担したか」が変わります。
| ケース | 葬儀費用を負担した人 | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 兄が立て替え、遺産から精算した | 遺産を分けた相続人(実質2人で負担) | 分割協議書に精算の内容を書いておく |
| 兄が立て替え、精算しないままにした | 兄 | 兄の取得分から葬儀費用を差し引く |
| 仮払い制度で父の預金から払った | 話し合いで決めた負担者 | 払い戻した金額と使い道の記録を残す |
| 放棄を考えている人が遺産から払った | 放棄できなくなるおそれ | 遺産に手をつける前に専門家に確認 |
相続税で差し引ける葬儀費用はどこまで?
相続税では、相続人が負担した葬式費用を遺産から差し引けます。国税庁の案内では、次のように分かれています。
| 差し引けるもの | 差し引けないもの |
|---|---|
| 火葬・埋葬・納骨の費用 | 香典返しの費用 |
| 遺体や遺骨の回送の費用 | 墓石・墓地の購入費、墓地の借用料 |
| お通夜など葬式の前後にかかる通常の費用 | 初七日や四十九日などの法要の費用 |
| お寺への読経料などのお礼 |
『四十九日も葬儀の続きみたいなものだし…』と思いますよね。ただ、法要の費用は葬式費用に入らないので、分けて記録しておきましょう。
では、香典はどうなるのか。香典は亡くなった人の財産ではなく、遺族が受け取るお金です。国税庁は、社会通念上相当な香典には贈与税がかからないとしています。
葬儀費用と同じように、亡くなった人の借入金や未払いの税金も遺産から差し引けます。立て替えたのが葬儀代だけとは限らないので、父の名義で残っていた支払いも一緒に洗い出しておきましょう。
母が健在で、母が葬儀費用を払ったケースは?
父が亡くなり、母と兄弟2人が相続するケースもありますよね。この場合、葬儀費用を母が負担したなら、母の取得分から差し引きます。
母には配偶者の税額軽減があり、取得した財産が1億6,000万円か法定相続分までなら相続税はかかりません。なので、葬儀費用をどの相続人が負担した形にするかで、家族全体の税額が変わることもあるんです。
ただし、配偶者の税額軽減で0円になる場合でも申告は必要です。誰が負担した形にするのがよいかは、遺産の分け方とあわせて税理士に確認しておきましょう。
また、亡くなった人が国民健康保険や後期高齢者医療の加入者なら葬祭費、会社員などの健康保険なら埋葬料を請求できます。請求の期限は2年以内です。

葬儀費用を差し引くと相続税はいくら変わる?
例えば、母が先に亡くなっていて、父の遺産5,000万円を兄弟2人で相続するケースを考えます。法定相続人は2人なので、基礎控除は4,200万円です。
葬儀費用200万円を差し引かないと、課税遺産総額は800万円で、相続税の総額は80万円になります。差し引くと課税価格の合計は4,800万円、課税遺産総額は600万円で、総額は60万円です。
| ケース | 兄の課税価格 | 弟の課税価格 | 兄の税額 | 弟の税額 |
|---|---|---|---|---|
| 葬儀費用を引かない(参考) | 2,500万円 | 2,500万円 | 40万円 | 40万円 |
| 兄が立て替えたまま精算しない | 2,300万円 | 2,500万円 | 28万7,500円 | 31万2,500円 |
| 遺産から精算し、2人で負担 | 2,400万円 | 2,400万円 | 30万円 | 30万円 |
どちらの分け方でも、相続税の合計は60万円で変わりません。変わるのは、兄弟それぞれの手取りと納める税額です。
兄が立て替えたまま精算しないと、兄だけが200万円を負担した形になります。後から「やっぱり返してほしい」となる前に、分割の時点で決めておくと揉めにくいんです。
葬儀費用の証拠がそろっていない、遺産が基礎控除を超えるかぎりぎり、兄弟で負担の割合がまとまらない。こんなケースは、申告まで任せられる税理士に相談すると楽になります。
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相続の手続き全体の順番は親が亡くなった後のやることリストで、相続税の申告の進め方は遺産規模別の申告の手順で確認できます。
よくある質問
葬儀費用を立て替えた兄は、領収書がないと相続税で差し引けませんか?
領収書があるのが望ましいですが、お寺へのお礼のように出ないものもあります。支払った日・金額・相手を記録しておき、申告の時に説明できるようにしておきましょう。
香典は遺産に含めて分ける必要がありますか?
香典は亡くなった人の財産ではないので、遺産分割の対象にはなりません。社会通念上相当な香典には贈与税もかかりません。
葬儀費用を差し引いた結果、遺産が基礎控除以下になったら申告は要りますか?
課税価格の合計が基礎控除以下なら、相続税の申告は要りません。ただし配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って0円になる場合は申告が必要です。
まとめ
- 立て替えた葬儀費用は、相続人全員が納得すれば遺産から精算できる
- 精算の内容は遺産分割協議書に書いておくと揉めにくい
- 香典返し・墓石・法要の費用は、相続税で差し引けない
- 遺産5,000万円・子2人のケースで葬儀費用200万円を引くと、相続税の総額は80万円から60万円になる
- 放棄を考えているなら、遺産から葬儀代を払う前に専門家に確認する





