遺言書と違う分け方を相続人全員で決めることはできる?

遺言書と違う分け方を相続人全員で決められるかを解説する記事のアイキャッチ

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父の遺言書を開けたら「全財産を長男に相続させる」と書いてあった。でも母の暮らしもあるし、家族の誰もその分け方を望んでいない。『遺言があるなら、そのとおりにするしかないの?』と迷いますよね。

結論から言うと、相続人全員が合意すれば、遺言と違う分け方を選べます。全員の協議で分けた形になるので、贈与税もかかりません。

ただ、1人でも反対する人がいたり、遺言執行者が決まっていたりすると話が変わります。この記事では、そのケースごとの違いを見ていきます。

目次

遺言書と違う分け方は、本当にできる?

このケースではこうなる

例えば、父が亡くなり、母と長男・次男が相続人で、遺言書に「全財産を長男に」とあったケースです。3人全員が合意すれば、遺産分割協議で「母が半分、長男と次男が4分の1ずつ」のように分けられます。長男から母や次男への贈与にはならず、相続税は協議で決めた取り分で計算します。

国税庁は、相続人全員の協議で遺言と違う分け方をした場合について、受け取るはずだった人が事実上遺贈を放棄し、相続人の間で分割したと考える取り扱いを示しています(国税庁 No.4176)。

その結果、各人の相続税は協議の内容で計算されます。受遺者である相続人から、ほかの相続人への贈与として贈与税がかかることはないんです。

ケース結論理由・注意
相続人全員が合意している遺言と違う分け方ができる協議で分けた形になり、贈与税はかからない
相続人の1人が反対している遺言どおりに分ける遺産分割協議は全員の合意が必要
相続人以外の人への遺贈があるその人の意思も確かめる受け取るかどうかは受遺者本人が決める
遺言執行者が決まっている執行者とも話して進める執行者がいると、相続人は執行を妨げる処分ができない
遺言で分割を一定期間禁じているその期間は協議で分けられない遺言で分割を禁じることができる
相続人全員の合意、1人の反対、相続人以外への遺贈、遺言執行者の有無で、遺言と違う分け方ができるかを分けたケース別の分岐表

分け方を変えると、相続税はどう変わる?

遺言と違う分け方にすると、取得する人が変わります。すると、配偶者の税額軽減の効き方が変わり、家族全体の税額が動くことも。

例えば、遺産1億円で、相続人が母と子2人のケースで比べてみます。

分け方相続税の総額母長男次男家族の合計
遺言どおり長男が全部630万円0円630万円0円630万円
協議で母1/2・子1/4ずつ630万円0円157万5,000円157万5,000円315万円

基礎控除は3,000万円+600万円×3人で4,800万円です。どちらの分け方でも相続税の総額は同じ630万円なんです。

違いは、母が受け取る分に配偶者の税額軽減が効くことです。母が半分を受け取ると、その分の税額が0円になり、家族の合計が下がります。

『母に多く渡すほど得なら、全部母に渡せばいいのでは?』と考える方もいますよね。ただ、母が亡くなった時の相続では配偶者の軽減は使えません。次の相続まで見て、分け方を決めておきましょう。

1人でも反対したら、どうなる?

遺産分割協議は、相続人全員の合意がないと成り立ちません。1人でも反対すれば、遺言どおりに分けることになります。

「母にも分けたいと思うんだけど、どうかな」
「遺言に長男って書いてあるなら、そのままでいいと思う」

こんなふうに意見が割れることもあります。話し合いで決まらなければ、家庭裁判所の調停という道もあります。

遺言で取り分が少なくなった相続人は、遺留分侵害額請求ができる場合があります。兄弟姉妹以外の相続人に認められる権利で、相続開始と侵害を知った時から1年で消えるので注意しておきましょう。

遺言と違う分け方をする時の進め方は?

全員の合意ができたら、その内容を書面に残します。ここをあいまいにすると、銀行や法務局の手続きで止まってしまうんです。

遺言と違う分け方をする前に確かめること
  • 相続人を戸籍で全員確かめ、1人も欠けずに合意しているか
  • 相続人以外への遺贈がある時は、その人が受け取るかどうか
  • 遺言執行者が指定されている時は、執行者と話ができているか
  • 合意した分け方を遺産分割協議書にまとめ、全員が署名・実印で押印したか
  • 相続税の申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)に間に合うか

自宅の土地をどう分けるかで、小規模宅地等の特例が使えるかどうかも変わります。要件を満たすかは、税理士に確認してみてください。

遺言の解釈で家族の意見が分かれている・土地がある・相続人が多い。こんなケースは、協議書づくりと申告をあわせて専門家に頼むと、手続きがぐっと進めやすくなります。

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遺言書が2通出てきて、そもそもどちらが有効か分からない時は、遺言書が2通ある時の判断の記事を先に読んでみてください。母の住まいをどうするかで迷ったら、父が亡くなった後の母の住まいと相続の考え方も参考になります。

よくある質問

遺言書と違う分け方をすると、贈与税はかかりますか?

相続人全員の協議で遺言と違う分け方をした場合、受遺者から他の相続人への贈与として贈与税がかかることはありません。相続税は協議で決めた取り分で計算します。

相続人の1人だけが遺言どおりを望んだら、遺言と違う分け方はできませんか?

できません。遺産分割協議は全員の合意が必要です。1人でも反対すれば遺言どおりに分けます。

遺言執行者がいても、遺言と違う分け方はできますか?

遺言執行者がいると、相続人は執行を妨げる処分ができません。進める場合は執行者とも話し合い、具体的な手順は専門家に確認すると安心です。

まとめ

この記事の要点
  • 相続人全員が合意すれば、遺言と違う分け方を選べる
  • その場合、贈与税はかからず、相続税は協議の取り分で計算する
  • 1人でも反対すれば遺言どおり。不満があれば遺留分の請求を考える
  • 相続人以外への遺贈や遺言執行者がある時は、その人の意思も確かめる
  • 配偶者が多く受け取ると税額は下がるが、次の相続まで見て決める
相続ケース案内

相続ケース案内 編集部

家族構成や財産の状況ごとに、相続・相続税がどうなるかを公的機関の公開情報をもとに解説しています。 公式サイト

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