当サイトは国税庁・法務省・裁判所などの公開情報をもとに編集部が執筆しています。記事内のサービス紹介には広告を含みます。
親が亡くなって実家が残ると、『兄弟で分けるより、誰か1人の名義にしたほうが後々楽そう』と考えますよね。
結論から言うと、1人にまとめるなら遺産分割の話し合いの中で決めるのがいちばん税金が軽く済みます。いったん兄弟の共有で登記した後にまとめると、贈与税や譲渡の税金がかかることがあるんです。
この記事では、まとめるタイミング別の税金と、兄弟でもめないための決め方を見ていきます。
遺産分割の前に、長男の名義にまとめるとどうなる?
相続人全員の遺産分割協議で「実家は長男が相続する」と決めれば、ほかの兄弟から長男への贈与にはならず、贈与税はかかりません。長男が受け取った実家は相続税の計算に入り、登記にかかる登録免許税は固定資産税評価額の0.4%です。一方、兄弟の共有で登記した後で1人に移すと、売買や贈与として扱われます。
遺産分割協議は、相続人全員が合意すれば、法定相続分と違う分け方でかまいません。1人が実家を取得し、ほかの兄弟は預金を多めに受け取る、という分け方もできます。
『でも、実家の価値が大きすぎて、預金だけでは釣り合わない』という家族も多いはずです。その時に使われるのが代償分割です。
代償分割は、実家を取得した長男が、ほかの兄弟にお金(代償金)を払う方法です。国税庁の通達でも、代償分割は遺産分割の方法の1つとして扱われています。
まとめるタイミングで、税金はどう変わる?
よくある3つのケースで比べてみます。
| ケース | かかる税金 | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 遺産分割協議で長男が実家を取得 | 相続税(登録免許税0.4%) | 相続で取得した扱い。贈与税はかからない |
| 協議で代償分割にし、長男が弟へ代償金を払う | 相続税(登録免許税0.4%) | 協議書に代償金の額と払い方を書いておく |
| 兄弟の共有で登記した後、弟が持分を長男へ売る | 弟に譲渡所得の税金(登録免許税は土地で2%、期限付きの軽減あり) | 相続ではなく売買になる |
| 兄弟の共有で登記した後、弟が持分を長男へ無償で渡す | 長男に贈与税(登録免許税2%) | 相続ではなく贈与になる |

登録免許税の税率は、国税庁のタックスアンサー(No.7191)にある税額表のとおりです。相続は1,000分の4、売買と贈与は1,000分の20になっています。
ここが大事なところです。同じ「長男の名義にする」でも、相続の手続きの中でやるか、その後でやるかで、税金の種類も額も変わってしまうんですね。
共有にした後でまとめる方法は兄弟で共有名義にした実家をあとで解消する方法で詳しく書いています。
長男が実家を取ると、相続税の負担はどうなる?
例えば、両親とも亡くなり、子ども3人が相続するケースで考えてみます。実家の評価額が3,600万円、預金が2,400万円、課税価格の合計は6,000万円です。
法定相続人は3人なので、基礎控除は4,800万円。課税遺産総額は1,200万円で、相続税の総額は120万円です。
| 分け方 | 長男 | 次男 | 三男 |
|---|---|---|---|
| 長男が実家、弟2人が預金を半分ずつ | 72万円 | 24万円 | 24万円 |
| 長男が実家を取り、弟2人に代償金800万円ずつ | 40万円 | 40万円 | 40万円 |
代償金を払うと、そのぶん長男の取得額が減り、弟たちの取得額が増えます。3人とも2,000万円ずつ受け取った形になり、税額も同じになるんです。
家族全体で払う120万円は変わりません。変わるのは誰がいくら払うかです。
反対に、代償金を払えないまま長男が実家を取ると、弟たちは『兄だけ得をした』と感じやすくなります。税金の負担を揃えたいのか、取得額を揃えたいのか、兄弟で先に話しておくと決めやすいですよ。
もう1つ見ておきたいのが、小規模宅地等の特例です。親と同居していた子が実家を相続するなら、土地の評価が下がって税額が減ることがあります。
同居していない子が取得する場合は、要件が変わります。親と同居していない子が実家を相続した時の特例で確かめてみてください。誰の名義にするかで特例が使えるかが変わるので、要件を満たすかは税理士に確認しておきましょう。
兄弟でもめないために、何を決めておく?
名義を1人にまとめる話は、税金よりも気持ちの面でつまずきやすいんです。例えば、こんなやり取りです。
「実家は俺が継ぐから、名義は俺でいいよな」
「いいけど、その分のお金はどうなるの?」
『兄弟なんだから、細かいことは言いにくい』と思う方も多いはずです。ただ、口約束で済ませると、後で言った言わないになりがちです。
特に気をつけたいのが、実家をこの先どうするかを決めないまま名義だけまとめるケースです。例えば、長男が住み続けるなら単独名義が自然ですが、数年後に売るつもりなら、売った時の税金や代金の分け方まで先に話しておいたほうが後でもめません。
長男が住む予定がなく、いずれ売るつもりなら、兄弟それぞれが受け取る形で分ける方法もあります。どちらが自分の家に合うかは、実家の使い道から逆算してみてください。
- 実家の評価額を何で見るか(固定資産税評価額か、路線価か、売るならいくらか)
- 代償金の額と、一括か分割かの払い方、支払いの期限
- 長男が代償金を払えるだけの資金があるか
- 仏壇やお墓を誰が引き継ぐか
- 実家の固定資産税や修繕費をこの先誰が負担するか
決めたことは、遺産分割協議書に書いておきましょう。代償金の約束を協議書に書かずに後から振り込むと、贈与と見られることがあります。
もう1つ、相続登記には期限があります。不動産を相続したと知った日から3年以内に登記する決まりで、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
話し合いがまとまらず期限に間に合わない時は、相続人申告登記という簡単な申出の方法もあります。ただ、これは名義をまとめたことにはならないので、協議がまとまったら改めて登記が要ります。
実家の評価の出し方や代償金の額で兄弟の意見が分かれそう、小規模宅地等の特例が使えるか分からない、という場合は、協議書を作る前に専門家へ見てもらうと楽です。
税理士ドットコム
わが家のケースは、相続に強い税理士に聞くのが近道
相続税がかかりそう、土地や自宅がある、相続人が多い、期限が近いといったケースでは、相続税に詳しい税理士に早めに相談すると安心です。税理士ドットコムなら、全国7,500名以上の登録税理士から相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。
紹介料無料税理士ドットコムで相続に強い税理士を紹介してもらう(税理士ドットコムの紹介ページに移動します・24時間365日受付)
よくある質問
兄弟の1人が実家を全部相続しても、贈与税はかかりませんか?
相続人全員の遺産分割協議で決めたのであれば、贈与税はかかりません。取得した実家は相続税の計算に入ります。協議が成立した後で名義を移し直すと、贈与や売買として扱われることがあります。
代償金を分割で払っても大丈夫ですか?
遺産分割協議で合意していれば、分割払いにすることもできます。毎回の金額と期限を協議書に書いておくと、後で行き違いが起きにくくなります。
すでに兄弟の共有で登記してしまった場合はどうすればいいですか?
持分を売る、無償で渡す、共有物の分割をするなどの方法があり、それぞれ税金と費用が変わります。どの方法が合うかは、実家を今後どう使うかで決めるのがおすすめです。
まとめ
- 実家を1人の名義にまとめるなら、遺産分割協議の中で決めると贈与税はかからない
- 相続の登録免許税は0.4%、共有で登記した後の売買・贈与は2%(土地の売買は期限付きの軽減あり)
- 代償分割にすると、兄弟それぞれの取得額と相続税の負担を揃えられる
- 代償金の額・払い方は遺産分割協議書に書いておく
- 相続登記は知った日から3年以内が期限





