当サイトは国税庁・法務省・裁判所などの公開情報をもとに編集部が執筆しています。記事内のサービス紹介には広告を含みます。
親が亡くなったあとに、借金の督促状が届いた。相続放棄をしたいけれど、専門家に頼む費用はできれば抑えたい、という方も多いはずです。
結論から言うと、相続放棄は自分でも申し立てられます。書類をそろえて家庭裁判所に出し、届いた照会書に正直に答えれば、多くのケースで受理されます。
この記事では、あなたが誰の立場で放棄するかによって変わる書類と、照会書の答え方をケース別に見ていきます。
相続放棄は、自分で申し立てても大丈夫?
はい、大丈夫です。亡くなった親の子が放棄するケースなら、申述書と戸籍・住民票の除票をそろえて家庭裁判所に出すだけです。費用は申述人1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手、戸籍の取得費です。期限は、自分のために相続が始まったと知った時から3か月以内です。
相続放棄の申述先は、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所です。
あなたの住んでいる場所の裁判所ではない点に注意してください。親が遠方で一人暮らしをしていたなら、親の住所地の家庭裁判所に出すことになります。
『裁判所って聞くと、なんだか怖い…』と感じますよね。
実は、相続放棄は法廷に呼ばれて話す手続きではありません。書類を出して、郵送で届く質問に答えるのが基本の流れなんです。
誰の立場で放棄するかで、書類の量が変わる
相続放棄で手間がかかるのは、戸籍集めです。あなたが配偶者・子なのか、親なのか、兄弟姉妹なのかで、集める戸籍の範囲が大きく変わります。
| ケース | 主な追加書類 | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 夫が亡くなり、妻が放棄する | 亡くなった人の死亡の記載がある戸籍 | 戸籍の量は少なめ |
| 親が亡くなり、子が放棄する | 亡くなった人の死亡の記載がある戸籍 | 孫が代わりに相続人になる時は、亡くなった子(孫の親)の死亡の記載がある戸籍も要る |
| 子が全員放棄し、亡くなった人の親が放棄する | 亡くなった人の出生から死亡までの全戸籍など | 子がいない(いなくなった)ことを戸籍で示す必要がある |
| 子も親もおらず、兄弟姉妹(叔父叔母)が放棄する | 亡くなった人の出生から死亡までの全戸籍、亡くなっている子の戸籍、直系尊属の死亡の記載がある戸籍など | 戸籍の量がもっとも多くなりやすい。甥姪が代わりに相続人になる時はさらに増える |
すべての人に共通で要るのは、亡くなった人の住民票の除票(または戸籍の附票)と、申述人自身の戸籍謄本です。

自分で相続放棄をする手順
全体の流れは次のとおりです。
- 亡くなった人のプラスの財産と借金を、分かる範囲で確認する
- 申述先の家庭裁判所(亡くなった人の最後の住所地)を調べる
- 戸籍謄本・住民票の除票などを集める
- 裁判所のホームページから申述書の書式を取り、記入する
- 収入印紙800円分を貼り、連絡用の郵便切手と書類をそろえて提出する
- 家庭裁判所から届く照会書(回答書)に答えて返送する
- 受理されると「相続放棄申述受理通知書」が届く
1の財産の確認は、放棄するかどうかを決めるために大事なところです。
借金が多いと思っていたら、実は預金や保険で返せる程度だった、ということも。通帳や郵便物、借入先からの通知を一通り見ておきましょう。
戸籍集めは、2024年3月1日に始まった戸籍証明書の広域交付を使うと楽になります。本籍地が遠くても、近くの市区町村の窓口で、親や子などの戸籍をまとめて請求できます(郵送や代理人による請求はできません)。
申述書はどう書けばいい?
申述書は、申述人の立場(成人か未成年か)によって書式が分かれています。成人が自分で放棄するなら、成人用の書式を選んでください。
書く内容で迷いやすいのは、次の3つです。
| 欄 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 相続の開始を知った日 | 通常は亡くなった日。疎遠で後から知った時は、知った日とそのきっかけを書く |
| 放棄の理由 | 「債務超過のため」「生活が安定している」「遺産が少ない」など、当てはまるものを選ぶ |
| 相続財産の概略 | 分かる範囲で、預金・不動産・借金のおおよその内容を書く |
財産の欄は、正確な金額が分からなくても大丈夫です。「不明」と書いたり、分かっている分だけ書いたりする人も多いです。
郵送で出すこともできる
申述書は、裁判所の窓口に持っていくほか、郵送で出すこともできます。遠方の家庭裁判所が申述先になる時は、郵送の方が現実的ですよね。
郵送する時は、書類のコピーを手元に残しておきましょう。照会書が届いた時に、自分が何を書いたか見返せるようにしておくためです。
連絡用の郵便切手は、裁判所ごとに額や組み合わせが違います。出す前に、申述先の家庭裁判所に確認しておくと安心です。
届いた照会書には、どう答える?
申述書を出してしばらくすると、家庭裁判所から照会書(回答書)が届きます。
これは、本当に本人の意思で放棄するのか、期限内か、財産を使っていないかを確かめるための質問です。内容は裁判所によって違いますが、よく聞かれるのは次のようなことです。
- 亡くなったことを、いつ・どうやって知ったか
- 相続放棄は、自分の意思で申し立てたか
- 亡くなった人の財産を使ったり、売ったり、名義を変えたりしていないか
- 借金や財産のことを、いつ知ったか
- 放棄する理由
答え方のコツは、事実をそのまま書くことです。
『少しでも不利なことを書いたら、放棄できなくなるのでは…』と心配になりますよね。ただ、ごまかして書いた内容が後で食い違う方が困ります。
例えば、こんな場面を考えてみてください。
「葬儀代を、親の口座から払ってしまいました。書かない方がいいですか?」
「隠さずに、いつ・何に・いくら使ったかを書いておく方が安心です」
財産を処分したり使ったりすると、単純承認とみなされて放棄できなくなることがあります。どこまでが問題になるかは個別の判断なので、迷う時は書く前に弁護士や司法書士に相談しておきましょう。
3か月を過ぎてから借金が分かったケース
亡くなって半年後に、知らなかった借金の通知が届くこともあります。
この場合は、「借金があると知った日」を照会書や申述書に具体的に書きます。通知書の封筒や日付が分かる物は、捨てずに取っておいてください。
3か月以内に財産の調べがつかない時は、期間を延ばしてもらう申立て(期間伸長)もできます。
相続放棄をする前に、知っておきたいこと
相続放棄をすると、初めから相続人でなかったことになります。
その結果、次の順位の人が相続人になります。子が全員放棄すれば亡くなった人の親へ、親もいなければ兄弟姉妹へ、順番が回っていくんです。
| ケース | 放棄したあとに起こること | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 子が1人だけ放棄し、ほかの子は相続する | ほかの子が借金も含めて相続する | 兄弟の間で、誰が何を引き継ぐか先に話しておく |
| 子が全員放棄する | 亡くなった人の親や兄弟姉妹が相続人になる | 親族に放棄したことを伝えておかないと、突然督促が届くことも |
| 生命保険金を受け取っている | 受取人の財産なので、放棄しても受け取れる | ただし相続税の生命保険金の非課税枠は使えない |
親族への連絡は、思っている以上に大事です。
例えば、叔父叔母にとっては、何も知らないうちに相続人になっていた、ということになります。受理通知書が届いたら、次の順位の人に一言伝えておきましょう。
放棄しても、家の管理が残る場合がある
放棄した時に、亡くなった人の家に住んでいるなど、財産を現に占有している人は、次の相続人などに引き渡すまで保存の義務があります(2023年4月1日施行の改正)。
実家を誰も引き継がない時は、相続財産清算人の選任なども関わってきます。不動産の名義の話は相続登記を誰がいつやるかのケース別の手順、いらない土地だけ手放したい時は土地を国に引き取ってもらう制度の申請の流れも見てみてください。
放棄するか迷う時は、相続税の目線でも確認を
借金だけでなく、自宅や預金、生命保険金もある時は、放棄しない方が手元に残る場合もあります。
相続放棄をした人も、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の人数には数えます。財産と借金の両方があり、相続税がかかるかどうかも気になるケースなら、税理士に一度見てもらうと判断しやすくなります。
税理士ドットコム
わが家のケースは、相続に強い税理士に聞くのが近道
相続税がかかりそう、土地や自宅がある、相続人が多い、期限が近いといったケースでは、相続税に詳しい税理士に早めに相談すると安心です。税理士ドットコムなら、全国7,500名以上の登録税理士から相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。
紹介料無料税理士ドットコムで相続に強い税理士を紹介してもらう(税理士ドットコムの紹介ページに移動します・24時間365日受付)
よくある質問
相続放棄は、兄弟で一緒に申し立てられますか?
申述は一人ひとりが行います。申述書は人数分が必要で、収入印紙も申述人1人につき800円分かかります。同じ戸籍は、同時に出すなら1通で足りる場合もあるので、申述先の裁判所に確認してみてください。
照会書の返送が遅れたら、どうなりますか?
返送がないと手続きが進みません。期限が書かれていることが多いので、届いたら早めに答えて返送しましょう。書き方で分からない点は、家庭裁判所に問い合わせることもできます。
受理されたことを、借入先にどう伝えればいいですか?
届いた相続放棄申述受理通知書のコピーを送るのが一般的です。正式な証明書が求められた時は、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書を申請します。
まとめ
- 相続放棄は自分でも申し立てられ、費用は申述人1人につき収入印紙800円と郵便切手、戸籍の取得費
- 期限は、自分のために相続が始まったと知った時から3か月以内。申述先は亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所
- 子が放棄するケースより、兄弟姉妹が放棄するケースの方が集める戸籍が多い
- 照会書には事実をそのまま答える。財産を使っていたら隠さずに書く
- 放棄すると次の順位の人が相続人になるので、親族に伝えておく




