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親の介護をほとんど一人で担ってきたのに、遺産の割合は介護しなかった兄弟と同じ。『それはおかしい』と感じますよね。
結論から言うと、介護しただけで割合が自動で増えることはありません。ただ、介護の程度によっては寄与分が認められ、取り分を増やせます。この記事では、介護の程度ごとに認められやすさと割合の変わり方を見ていきます。
介護した兄弟の割合は、自動では増えない
兄弟3人なら、介護したかどうかに関係なく法定相続分は3分の1ずつです。介護した人が増やしたい時は、寄与分を主張して兄弟の合意か家庭裁判所の判断をもらう必要があります。例えば遺産3,000万円で寄与分300万円が認められると、介護した人の割合は3分の1から4割に上がります。
法定相続分は、子どもなら人数で均等です。親の面倒を見たかどうかでは変わりません。
逆に言うと、介護しなかった兄弟の取り分が「減額」される仕組みもありません。介護した人の側が寄与分を上乗せしてもらうことで、結果として割合が変わるんです。
| 計算 | 寄与分なし | 長女の寄与分300万円 |
|---|---|---|
| 遺産 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 寄与分を引いた金額 | 3,000万円 | 2,700万円 |
| 3人で分けた額 | 1,000万円ずつ | 900万円ずつ |
| 長女(介護した人) | 1,000万円(3分の1) | 1,200万円(4割) |
| 長男・次男 | 1,000万円ずつ | 900万円ずつ(3割ずつ) |
寄与分の金額の決め方や、家業・費用負担のケースの計算は寄与分はいくらになるかのケース別計算で詳しく扱っています。
兄弟2人なら、割合はどこまで変わる?
兄弟が2人だと、寄与分の影響はもっと大きく見えます。
例えば、母はすでに亡くなり、父の遺産5,000万円を長女と長男で分けるケースです。長女が同居して数年間介護し、寄与分500万円で合意したとします。
| 計算 | 寄与分なし | 長女の寄与分500万円 |
|---|---|---|
| 寄与分を引いた金額 | 5,000万円 | 4,500万円 |
| 2人で分けた額 | 2,500万円ずつ | 2,250万円ずつ |
| 長女の取り分 | 2,500万円(5割) | 2,750万円(5割5分) |
| 長男の取り分 | 2,500万円(5割) | 2,250万円(4割5分) |
| 相続税(総額80万円の負担) | 40万円ずつ | 長女44万円・長男36万円 |
この家族は相続人2人で基礎控除が4,200万円なので、課税遺産総額800万円に対して相続税の総額は80万円です。取り分が増えた長女は、税金も少し多めに負担します。
実は、寄与分は「遺産全体のうち何割」と決まっているものではありません。同じ介護でも、遺産が少なければ割合の変化は大きく、遺産が多ければ小さく見えます。
介護の程度で、寄与分はどう変わる?
裁判所の説明では、寄与分の対象になる貢献の一つに「被相続人の療養看護」があります。ただし、親の財産の維持や増加に「特別に」寄与したと言える必要があります。
親子なら普通にする手伝いは、ここに入りにくいんです。介護の程度ごとに見てみましょう。
| 介護のケース | 寄与分の認められやすさ | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 同居し、要介護状態の親を毎日介護。介護サービスはほとんど使っていない | 認められる可能性がある | 本来かかる介護費用が親の財産から出ずに済んでいる |
| 仕事を辞めて、数年間ほぼ毎日通って介護した | 認められる可能性がある | 無償で長く続け、かなりの負担を負っている |
| 週末に通って、見守りや買い物を手伝った | 認められにくい | 親子として通常期待される範囲と見られやすい |
| 施設やヘルパーの手配をしたが、費用は親の年金から出た | 認められにくい | 親の財産が減らずに済んだとは言いにくい |
| 介護の代わりに、親から毎月お金を受け取っていた | 認められにくい | 無償ではないと見られる |
ここで大事なところです。介護がどれだけ大変だったかより、「そのおかげで親のお金がどれだけ減らずに済んだか」で見られます。
『あんなに大変だったのに、認められないの?』と感じる方もいるはずです。気持ちの面の苦労と、お金の面の評価は別物として扱われてしまうんですね。

介護しなかった兄弟の側から見ると
反対に、『介護しなかったから取り分を減らされるの?』と心配している方もいるかもしれません。
介護しなかったことだけを理由に、法定相続分が減ることはありません。ただし、介護した兄弟が寄与分を主張し、それが認められれば、その分だけ自分の取り分は減ります。
よくあるのが、こんなやりとりです。
「ずっと私が介護してきたんだから、多めにもらっていいでしょ」
「じゃあ、どのくらい大変だったのか見せてほしい」
感情だけでぶつかると話が止まります。介護の記録や費用の記録を見ながら、金額で話し合うほうが進みやすいですよ。
一方で、介護を担った兄弟が親のお金を管理していた場合、引き出しの使い道を聞きたくなることもありますよね。介護に使ったお金の記録は、介護した側を守る材料にもなります。
介護を寄与分として主張するための準備
寄与分を主張するなら、介護の中身を後から説明できる形で残しておくことがいちばんの準備です。
- 介護日誌(日付・時間・したこと)
- 要介護認定の通知やケアプラン
- 仕事を辞めた・減らした時期が分かるもの
- 自分のお金で払った介護用品や医療費の領収書
- 親のお金を使った時の出金記録と使い道のメモ
話し合いでまとまらない時は、家庭裁判所の遺産分割調停の中で寄与分を主張するか、寄与分を定める処分調停を申し立てます。寄与分の調停は、申立人1人につき収入印紙1,200円分と郵便切手が必要です。
時間制限もあります。2023年4月1日施行の改正で、相続開始から10年を過ぎると原則として寄与分を主張できなくなりました。
介護したのが兄弟の配偶者なら
介護を実際に担ったのが長男の妻、というケースも多いですよね。
長男の妻は相続人ではないので、寄与分は使えません。代わりに、2019年7月1日から始まった特別寄与料で、相続人にお金を請求できます。
| 介護した人 | 使える制度 | 期限 |
|---|---|---|
| 子(相続人) | 寄与分 | 相続開始から10年を過ぎると主張できない |
| 長男の妻など、相続人でない親族 | 特別寄与料 | 相続の開始と相続人を知った時から6か月、相続開始から1年 |
特別寄与料は期限がかなり短いので、話し合いが長引きそうなら早めに動いておきましょう。
生前に打てる手もあります。介護してくれた子に多めに残す遺言を書いてもらう方法です。書き方は遺言書で一人に多く相続させる時の文例が参考になります。
寄与分で取り分が変わると、相続税の負担割合も変わります。遺産が基礎控除を超えそう、土地があって評価が難しい、といったケースは、税理士に取り分と税額をまとめて試算してもらうと話し合いがスムーズです。
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よくある質問
親と同居していただけで、遺産の割合は増えますか?
同居しているだけでは増えません。無償で長く介護を担い、介護費用がかからずに済んだなど、特別な貢献と言える事情が必要です。
介護しない兄弟の相続分を減らすことはできますか?
介護しなかったことだけで減らす仕組みはありません。介護した人の寄与分が認められると、結果として他の兄弟の取り分が減ります。
親が生きているうちにできる対策はありますか?
介護した子に多めに残す遺言を書いてもらう方法があります。ほかの兄弟の遺留分には気をつけておきましょう。
まとめ
- 介護しただけでは、遺産の割合は自動で増えない
- 寄与分が認められると、介護した人の割合が上がる
- 認められやすいのは、無償で長く、介護費用が親の財産から出ずに済んだケース
- 介護日誌や費用の記録が主張の材料になる
- 介護したのが相続人でない親族なら、期限の短い特別寄与料で請求する





