当サイトは国税庁・法務省・裁判所などの公開情報をもとに編集部が執筆しています。記事内のサービス紹介には広告を含みます。
何年も親の介護をしてきたのに、遺産の話になると「きょうだいで平等に」と言われた。『あれだけやったのに、同じなの?』とモヤモヤしている方も多いはずです。
結論から言うと、介護の苦労は「寄与分」として遺産分割で伝えることができます。ただ、気持ちだけで話すと通りにくいので、記録と伝え方の順番が大事なんです。
この記事では、介護した側が話し合いで主張する時のケース別の考え方と、伝え方のコツが分かります。
介護した分は、遺産分割でどう扱われる?
相続人である子が親を介護し、そのおかげで親の財産が減らずに済んだと言える時は、寄与分として多めに受け取れる可能性があります。ただし、家族として普通に期待される手伝いの範囲だと認められにくいです。相続人ではない子の配偶者が介護した場合は、寄与分ではなく「特別寄与料」を請求する形になります。
寄与分は、相続人の中に親の財産の維持や増加に特別な貢献をした人がいる時、その分を上乗せして分ける仕組みです。介護はその代表例ですね。
ただ、『介護したんだから当然でしょ』という主張だけだと、話はまとまりにくいです。どんな介護だったかで、認められやすさが変わります。
| ケース | 主張できる形 | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 同居して長く日常の介護を担い、ヘルパー代などがかからずに済んだ | 寄与分を主張しやすい | 介護がなければ出ていた費用を示せると伝わりやすい |
| 週末に通って買い物や通院の付き添いをした | 寄与分としては認められにくい | 家族として普通の手伝いと見られやすい |
| 子が親の施設費や医療費を自分のお金で払った | 寄与分を主張できる可能性 | 領収書と振込記録が根拠になる |
| 長男の妻など、相続人ではない親族が介護した | 特別寄与料を請求 | 相続の開始と相続人を知った時から6か月・相続開始から1年以内 |
特別寄与料の期限はとても短いです。子の配偶者が介護を担っていたケースでは、四十九日を待たずに準備を始めておきましょう。
寄与分が認められると、取り分はどう変わる?
計算の仕方を知っておくと、話し合いで具体的な数字を出せます。
例えば、遺産が3,000万円で、相続人が子3人のケースです。同居して介護した長女の寄与分を、仮に300万円と合意した場合で比べてみます。
| ケース | 分ける元になる額 | 介護した長女 | ほかの子2人 | 理由・注意 |
|---|---|---|---|---|
| 寄与分を考えない | 3,000万円 | 1,000万円 | 各1,000万円 | 法定相続分どおり |
| 寄与分300万円で合意 | 3,000万円から300万円を引いた2,700万円 | 900万円と300万円で1,200万円 | 各900万円 | 先に寄与分を引いて分け、最後に足す |
300万円は計算の流れを見るための仮の数字です。実際の寄与分の額は、介護の期間や内容をもとに話し合いで決めます。
『300万円なんて、介護の大変さに比べたら少ない…』と感じるかもしれません。ただ、寄与分は「財産がどれだけ減らずに済んだか」で考えるので、気持ちの大きさとは別の物差しなんです。

なお、相続開始から10年を過ぎると、寄与分を主張できなくなり、原則として法定相続分で分けることになります。話し合いを先延ばしにしているケースは気をつけておきましょう。
介護日誌など、どんな証拠をそろえればいい?
話し合いで頼りになるのは、記録です。思い出話ではなく、日付と内容が分かるものを集めておきましょう。
- 介護日誌やメモ(日付・時間・したこと)
- 要介護認定の通知書や、ケアプランの写し
- 介護サービスの利用記録や、利用を減らせた期間が分かるもの
- 自分が立て替えた施設費・医療費の領収書と振込記録
- 仕事を辞めた・減らした時期が分かる書類
- 親とのやり取り(メール・メッセージ)で介護の様子が分かるもの
介護日誌は、毎日きっちり書いていなくても大丈夫です。カレンダーへの書き込みや、スマホのメモでも手がかりになります。
『今から記録なんて作れない…』という方もいますよね。その場合は、通院の記録や介護サービスの請求書から、いつ誰が付き添ったかを思い出して書き出してみてください。
角が立たない伝え方の順番は?
ここが多くの方が悩むところだと思います。証拠がそろっていても、伝え方を間違えると話がこじれてしまいます。
- 先に遺産の全体(預貯金・不動産など)をみんなで確認する
- 介護の期間と内容を、記録を見せながら事実として話す
- 「介護がなければかかっていた費用」を具体的に伝える
- 希望する取り分を、金額か割合で示す
- まとまらない時は、家庭裁判所の調停を使うことも考える
例えば、こんな言い方だと伝わりやすいです。
「お母さんが要介護になってからの5年間、平日は私が付き添っていたよね。その間、デイサービス以外のヘルパーは頼まずに済んでいたの」
「そうだったんだ。その分をどう考えるか、一緒に決めようか」
逆に、「私ばっかり大変だった」と感情から入ると、相手も身構えてしまいます。事実と数字を先に出すのがコツですよ。
遠くに住むきょうだいとは、話し合いの場をつくること自体が大変ですよね。進め方は親と遠く離れて住む子どもが相続手続きを進める工夫も参考にしてみてください。
話し合いがまとまらない時はどうする?
遺産分割は相続人全員の合意が必要です。1人でも納得しなければ、協議は成立しません。
まとまらない時は、家庭裁判所の調停を申し立て、それでも決まらなければ審判で決まります。調停では、介護の記録がそのまま判断材料になります。
| 状況 | 進め方 | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 金額で少し開きがあるだけ | 話し合いを続ける | 預貯金で調整するなど分け方を工夫する |
| きょうだいが寄与分を一切認めない | 調停を申し立てる | 記録をそろえてから臨む |
| 相続税の申告期限が近い | いったん法定相続分で申告 | 分割見込書を出しておけば、後で特例を使い直せる |
もう1つ気をつけたいのが、きょうだい側からの反論です。例えば「同居していた間、家賃も生活費も親が出していたよね」と言われることがあります。
親から生活費の援助や住まいの提供を受けていた場合、その分が介護の評価と差し引きで考えられることも。自分に不利な事情も先に把握しておくと、話し合いで慌てずに済みますよ。
親が老人ホームに入っていた期間がある場合は、老人ホームに入居していた親が亡くなった時の手続きで、施設費の精算や返還金の扱いも確認できます。
遺産に土地や自宅があって、分け方と相続税の両方を考えないといけないケースは、税理士に頼むと楽です。自宅を誰が取るかで小規模宅地等の特例の使い方も変わるので、早めに試算しておくと話し合いの材料にもなります。
税理士ドットコム
わが家のケースは、相続に強い税理士に聞くのが近道
相続税がかかりそう、土地や自宅がある、相続人が多い、期限が近いといったケースでは、相続税に詳しい税理士に早めに相談すると安心です。税理士ドットコムなら、全国7,500名以上の登録税理士から相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。
紹介料無料税理士ドットコムで相続に強い税理士を紹介してもらう(税理士ドットコムの紹介ページに移動します・24時間365日受付)
よくある質問
介護のために仕事を辞めたことは、寄与分で考慮されますか?
介護の内容や期間とあわせて、話し合いの事情として伝えることはできます。ただ、それだけで寄与分の額が決まるわけではないので、記録と一緒に具体的に伝えてみてください。
親が生前に「介護してくれたから多めに」と言っていた場合は?
口約束だけでは、ほかの相続人が同意しなければ分け方に反映しにくいです。遺言書があれば話は変わるので、まずは遺言書が残っていないかを確認しておきましょう。
長男の妻が介護していた場合、長男が代わりに寄与分を主張できますか?
妻自身は相続人ではないので、特別寄与料を請求する方法があります。期限が6か月・1年と短いので、早めに家族で相談しておきましょう。
まとめ
- 相続人である子の介護は、寄与分として遺産分割で主張できる可能性がある
- 家族として普通の手伝いの範囲だと、寄与分は認められにくい
- 寄与分は遺産から先に引いて分け、最後に介護した人に足す計算
- 子の配偶者が介護した時は特別寄与料で、期限は6か月・1年
- 介護日誌や領収書をそろえ、事実と数字から先に伝える





