自宅は妻、預金は子どもに分ける遺言の書き方と注意点

自宅は妻、預金は子どもに分ける遺言の書き方と注意点を解説する記事のアイキャッチ

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自分が先に亡くなったら、妻には今の家に住み続けてほしい。預金は子どもたちで分けてくれればいい。そう考えて遺言を書こうとしている方は多いですよね。

結論から言うと、「自宅は妻、預金は子ども」という分け方は遺言で十分に実現できます。ただ、預金が少ない家では、子どもの遺留分に届かないことがあるんです。

この記事では、そのまま使える文例と、預金が多い家・少ない家で何が変わるかが分かります。

目次

自宅を妻、預金を子どもに分けると、どうなる?

このケースの結論

夫が亡くなり、妻と子2人が相続するケースなら、遺言で「自宅は妻に、預金は子2人に半分ずつ」と書けば、その通りに分けられます。ただし子どもの遺留分は1人あたり遺産の8分の1です。預金の額が子どもの遺留分に届かないと、後で子どもから請求される余地が残ります。

例えば、自宅(評価額3,000万円)を妻に、預金を子2人に半分ずつ残すケースで、預金の額だけを変えて比べてみます。

ケース遺産子1人が受け取る額子1人の遺留分(8分の1)結論・注意
預金が多い家自宅3,000万円・預金4,000万円2,000万円875万円遺留分は満たしている
預金が少ない家自宅3,000万円・預金800万円400万円475万円1人75万円ずつ遺留分に足りない

金額は評価額をそのまま使った例です。遺留分の計算に使う財産の値段は、相続税の評価とは別に考えることがあります。

妻と子2人の家族図で、自宅を妻、預金を子2人に分けた時の取り分と遺留分を並べた家系図

『子どもたちは文句を言わないはず』と思いますよね。ただ、子どもが結婚して家庭を持つと、事情が変わることもあります。遺言で外された人の遺留分の計算は、遺留分はいくら?ケース別に金額を計算で詳しく見られます。

そのまま使える遺言の文例

遺言では、誰に何を渡すかを、財産が特定できる形で書きます。不動産は登記事項証明書のとおり、預金は銀行名・支店・口座番号まで書くのが基本です。

文例(自宅は妻、預金は子2人に半分ずつ)

第1条 遺言者は、遺言者の所有する次の不動産を、遺言者の妻 ○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。(所在・地番・地目・地積、家屋番号などは登記事項証明書のとおりに書く)

第2条 遺言者は、遺言者名義の次の預金を、長男 ○○○○ および長女 ○○○○ に各2分の1の割合で相続させる。(○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○)

第3条 遺言者は、前各条に書いた財産以外の一切の財産を、妻 ○○○○ に相続させる。

第4条 妻 ○○○○ が遺言者より先に、または同時に死亡した時は、第1条と第3条の財産を、長男と長女に各2分の1の割合で相続させる。

第3条は、書き漏れた財産の受け取り手を決めておくための一文です。これがないと、漏れた財産だけ兄弟と母で話し合うことになります。

第4条は「予備的な書き方」と呼ばれるものです。妻が先に亡くなった時のことも決めておけば、遺言を書き直さずに済みます。

自筆で書く場合は、全文・日付・氏名を自分で書いて押印します。財産目録はパソコンで作ったものや通帳のコピーでもよく(各ページに署名押印が要ります)、2019年1月13日以降に書いた遺言から使えます。

書く時に気をつけたいことは?

預金が少ない家は、付言で気持ちを伝える

上の「預金が少ない家」のように、子どもの遺留分に届かないこともあります。法律上の扱いを変えることはできませんが、遺言の最後に気持ちを書く「付言事項」を添えておくことはできます。

例えば、こんな一文です。

「お母さんがこの家で安心して暮らせるように、家はお母さんに残します。2人とも分かってくれると嬉しいです」

付言に法的な効力はありません。ただ、子どもが遺留分を請求するかどうかを考える時に、親の気持ちが伝わっているかで受け止め方は変わるものです。

自宅の評価が高い家は、配偶者居住権も選択肢

自宅の評価が高く預金が少ない家では、自宅を丸ごと妻に渡すと、子どもの取り分が遺留分に届きにくくなります。

そんな時に考えられるのが、2020年4月1日に始まった配偶者居住権です。妻は「住み続ける権利」だけを受け取り、家そのもの(所有権)は子どもに渡す形にできます。

『そんな分け方ができるの?』と驚く方もいますよね。妻は家に住み続けられて、子どもは家の分も取り分に入るので、遺留分の不足を埋めやすくなることがあります。

二次相続まで見ておく

妻が自宅を受け取ると、妻が亡くなった時に、今度は子どもたちがその自宅を相続します。これを二次相続といいます。

その時は配偶者がいないので、配偶者の税額軽減は使えません。自宅を誰が継ぐのか、売るのかまで家族で話しておくと、後の兄弟の話し合いが楽になります。

保管場所と、遺言を実行する人を決めておく

自筆の遺言は、法務局の自筆証書遺言書保管制度(手数料1通3,900円)を使うと、家庭裁判所の検認が要りません。公正証書遺言も検認は不要です。

遺言を実行する人(遺言執行者)を決めておくと、預金の解約などが進めやすくなります。保管場所の選び方は書いた遺言書はどこに保管する?で比べています。

相続税は、この分け方でいくらになる?

『妻が自宅を受け取ると税金はどうなるの?』と気になりますよね。預金が多い家(遺産7,000万円)で計算してみます。

計算の流れ特例なし自宅の土地に小規模宅地等の特例
課税価格の合計7,000万円5,400万円(土地2,000万円が400万円に)
基礎控除(3,000万円+600万円×3人)4,800万円4,800万円
課税遺産総額2,200万円600万円
相続税の総額225万円60万円
妻の納付額0円(配偶者の税額軽減)0円(配偶者の税額軽減)
子1人の納付額64万2,800円22万2,200円
納付額の合計128万5,600円44万4,400円

自宅の評価額3,000万円のうち土地を2,000万円、面積は330㎡以内とした例です。妻が自宅の土地を相続すると、特定居住用宅地等として80%減額できる可能性があります。

ここで気をつけたいのは、妻の税額が0円でも申告が要ることです。配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も、申告して初めて使えます。

自宅の土地に特例が使えるか、遺言の分け方で子どもの税額がどう変わるかは、家ごとに違います。遺言を書く前に一度計算しておきたいケースなので、要件を満たすかは税理士に確認してみてください。

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よくある質問

自宅を妻に渡すと、子どもから遺留分を請求されますか?

子どもが受け取る預金が、子1人あたり遺産の8分の1以上あれば、遺留分は満たしています。足りない場合は請求される余地があります。請求は相続開始と侵害を知った時から1年、相続開始から10年で消滅します。

預金は「子どもに半分ずつ」とだけ書いてもいいですか?

財産が特定できないと手続きで困ることがあるので、銀行名・支店・口座の種類・口座番号まで書いておきましょう。書き漏れに備えて「その他一切の財産は妻に」といった一文も添えておくと安心です。

妻が先に亡くなったら、遺言はどうなりますか?

妻に渡すと書いた部分は、そのままでは効力がなくなります。「妻が先に亡くなった時は子に」という予備的な書き方をしておけば、書き直さずに済みます。

まとめ

この記事の要点
  • 「自宅は妻、預金は子ども」は遺言で実現でき、財産は特定できる形で書く
  • 子どもの遺留分は1人あたり遺産の8分の1。預金が少ない家は届かないことがある
  • 書き漏れ対策の一文と、妻が先に亡くなった時の予備的な書き方を入れる
  • 妻の相続税が0円でも、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例には申告が要る
相続ケース案内

相続ケース案内 編集部

家族構成や財産の状況ごとに、相続・相続税がどうなるかを公的機関の公開情報をもとに解説しています。 公式サイト

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