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親が亡くなってしばらくして、銀行の口座が空になっていた。実家の名義がいつの間にか兄に変わっていた。そんなことが分かったら、頭が真っ白になりますよね。
結論から言うと、相続の手続きには「一人でできるもの」と「相続人全員の合意が要るもの」があります。この記事では、勝手に進められた手続きがどちらに当たるかを見分けて、次に何をすればいいかをケースごとに見ていきます。
勝手に進められた手続き、そもそも有効なの?
遺産をどう分けるかは、相続人全員の合意がないと決まりません。自分が同意していない遺産分割協議書で名義が変わっていたなら、その協議は成り立っていないと主張できます。一方で、預金の仮払いのように、一人で進めてよい手続きもあります。
『兄が全部やってくれたから、もう覆らないのでは』と不安になる方も多いはずです。
実は、勝手に進められた手続きでも、中身によって扱いがまったく違うんです。まずは、何がどう変わっていたのかを落ち着いて書き出してみてください。
例えば、父が亡くなり、母はすでに他界していて、子が兄・自分・妹の3人というケース。兄が同居していて通帳や実印を管理していた、という家で起きやすい話です。
| ケース | 一人でできる? | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 預金を150万円以内で引き出していた | できる場合がある | 預貯金の仮払い制度の範囲なら単独で払い戻せる |
| 預金をほぼ全額引き出していた | 原則できない | 他の相続人の取り分まで手をつけている可能性 |
| 実家を法定相続分どおりの共有名義にした | できる | 持分は法律どおりで、自分の取り分は減らない |
| 実家を兄一人の名義にした | 全員の合意か遺言が要る | 自分が押印していない協議書なら問題になる |
| 預けていた実印で協議書に押されていた | 本人の意思がない | 同意したことにはならないと争える |

自分の取り分がいくらになるのかは、家族構成から取り分を計算する方法で先に確かめておくと話が早くなります。
親の預金が無断で引き出されていたら?
銀行の口座は、亡くなったことが伝わると止められます。ただ、止められる前にキャッシュカードで引き出されていた、というケースはよくあります。
ここが大事なところです。亡くなった後なら、預貯金の仮払い制度を使って一人で払い戻すこともできます。上限は1つの金融機関ごとに「亡くなった時の預金額 × 1/3 × その人の法定相続分」で、150万円までです。
例えば、葬儀代に充てるために兄が150万円を引き出していた、というケース。これは制度の範囲内で、きちんと使い道が説明されれば問題になりにくい場面です。
反対に、亡くなる前後に何百万円も引き出され、使い道の説明がない場合は話が変わります。他の相続人の取り分まで使ってしまっている可能性があるからです。
「葬儀にいくらかかったの?」
「いろいろだよ。細かいことは覚えていない」
こんなやり取りで終わらせず、通帳や取引履歴を確認してみてください。生前の引き出しも含めた調べ方は、親の預金を兄弟が使い込んでいた時の調べ方で詳しく扱っています。
なお、遺産を分ける前に一人が勝手に処分した財産も、他の相続人全員が同意すれば、遺産分割の対象に含めることができます。このとき、処分した本人の同意は要りません(法務省の相続法改正の解説)。
実家の名義が勝手に変わっていたら?
実家の名義変更は、まず法務局で登記事項証明書を取って中身を見ます。誰の名義に、いつ、どんな理由で変わったのかが書いてあります。
『名義が変わっている時点で、もう終わりでは?』と思うかもしれません。ただ、登記の原因によって意味が違うんです。
| 登記の内容 | 考えられる背景 | 確認すること |
|---|---|---|
| 相続人全員の共有(法定相続分どおり) | 一人で申請できる登記 | 自分の持分がきちんと入っているか |
| 兄一人の名義(遺産分割) | 遺産分割協議書が使われた | 自分の署名押印・印鑑証明を出したか |
| 兄一人の名義(遺言) | 遺言書が使われた | 遺言の中身と形式、遺留分 |
例えば、遺産分割を原因に兄一人の名義になっていたのに、自分は協議書に署名も押印もしていない、というケース。このときは、登記に使われた書類を確認し、弁護士に相談して登記を正す手続きを考えます。
遺言で兄に全部と書かれていた場合でも、子には遺留分があります。相続開始と侵害を知った時から1年、相続開始から10年で請求できなくなるので、早めに動いておきましょう。
ちなみに、相続登記は2024年4月1日から義務になっています。取得を知った日から3年以内が期限なので、兄が急いで登記をしたのはこの義務を気にしたから、という場合もあります。
気づいた時に、まず何から確認する?
気持ちが落ち着かないと、つい相手を責めたくなりますよね。でも、最初にやることは「事実を集めること」です。
- 何が変わっていたかを書き出す(預金・不動産・車・株など)
- 銀行に取引履歴を、法務局に登記事項証明書を請求する
- 相続人が誰かを戸籍で確かめる
- 手続きをした相続人に、使い道や書類の出どころを文章で尋ねる
- 話し合いで解決しなければ、家庭裁判所の調停を考える
4番目の「文章で尋ねる」は、電話や口頭より残る形がおすすめです。例えば、次のように事実だけを聞く書き方にすると、角が立ちにくくなります。
「父の口座から出金された分について、日付と使い道が分かる領収書などを見せてもらえますか」
『問い詰めたら関係が壊れそう』と迷う気持ちは自然です。ただ、記録が残っていれば、後で調停や弁護士に相談する時の材料にもなります。
戸籍の集め方は、相続で集める戸籍はどこまで必要かを見てみてください。
話し合いがまとまらない時は、家庭裁判所の調停、それでもだめなら審判へと進みます。相手と顔を合わせたくない、という方も多いはずです。そんな時は、交渉の代理ができる弁護士に頼む方法もあります。
ここで気をつけたいのが、相続税の申告期限です。亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告と納付をする必要があります。もめている間も、この期限は止まりません。
期限内に分け方が決まらない時は、法定相続分で仮に申告し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を出しておく方法があります。こうしておくと、分け方が決まった後に配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を受けられます。
遺産に土地がある、相続人どうしで連絡が取りにくい、期限が近いといったケースは、相続税に詳しい税理士に早めに相談しておくと楽になります。どの特例が使えるかも含めて確認してもらえます。
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よくある質問
相続人の一人が勝手に預金を引き出すのは違法ですか?
亡くなった後の仮払い制度の範囲なら一人で払い戻せます。範囲を超えて引き出し、自分のために使った場合は、他の相続人が返還を求められることがあります。
勝手に作られた遺産分割協議書は、どうすれば無効にできますか?
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。自分が同意していない協議書なら、弁護士に相談して協議が成り立っていないことを主張し、やり直しを求めます。
実印を兄に預けていました。押された書類はどうなりますか?
実印が押されていても、本人がその内容に同意していなければ争う余地があります。預けた経緯や時期をメモに残し、専門家に相談してみてください。
まとめ
- 遺産の分け方は相続人全員の合意がないと決まらない
- 預金の仮払いや法定相続分どおりの登記など、一人でできる手続きもある
- 勝手に処分された財産も、他の相続人全員の同意で遺産分割に含められる
- まず取引履歴と登記事項証明書で事実を集める
- もめていても相続税の申告期限の10か月は止まらない




