当サイトは国税庁・法務省・裁判所などの公開情報をもとに編集部が執筆しています。記事内のサービス紹介には広告を含みます。
家は同居している長男に継いでほしい。そのかわり、預金は次男に渡したい。兄弟の取り分をこう分ける遺言を考えている方は多いですよね。
結論から言うと、この分け方は遺言で実現できます。ただ、家の値段が預金よりずっと大きい家では、次男の遺留分に届かないことがあるんです。
この記事では、そのまま使える文例と、家と預金の割合ごとに遺留分と相続税がどう変わるかが分かります。
家を長男、預金を次男にすると、次男の遺留分は足りる?
相続人が子2人だけなら、次男の遺留分は遺産全体の4分の1です。次男が受け取る預金がこの4分の1以上あれば、遺留分は足りています。家の値段に比べて預金が少ない家では足りないことがあるので、遺言を書く前に一度計算しておきましょう。
例えば、母が先に亡くなっていて、父の遺産を長男と次男が相続するケースで考えます。家と預金の割合を変えると、結果はこう分かれます。
| ケース | 遺産 | 次男が受け取る額 | 次男の遺留分(4分の1) | 結論・注意 |
|---|---|---|---|---|
| 家と預金が同じくらい | 家3,000万円・預金3,000万円 | 3,000万円 | 1,500万円 | 遺留分は満たしている |
| 家の方がずっと大きい | 家4,000万円・預金1,000万円 | 1,000万円 | 1,250万円 | 250万円足りない |
金額は評価額をそのまま使った例です。遺留分の計算に使う財産の値段は、相続税の評価とは別に考えることがあります。

『兄弟なんだから、家のことは分かってくれるはず』と思いますよね。実は、遺留分は「足りない」と分かった時点で、次男が請求できる権利なんです。
遺留分の請求は、相続開始と侵害を知った時から1年、相続開始から10年で消えます。2019年7月1日以降は、家そのものではなくお金で請求する形になっています。請求された側の考え方は兄弟から遺留分を請求された時に払う金額で解説しています。
そのまま使える遺言の文例
第1条 遺言者は、遺言者の所有する次の土地および建物を、長男 ○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。(所在・地番・家屋番号などは登記事項証明書のとおりに書く)
第2条 遺言者は、遺言者名義の次の預金を、次男 ○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。(○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○)
第3条 遺言者は、前各条に書いた財産以外の一切の財産を、長男 ○○○○ に相続させる。
第4条 長男が遺言者より先に、または同時に死亡した時は、第1条と第3条の財産を、長男の子 ○○○○ に相続させる。
第3条は、書き漏れた財産の行き先を決めるための一文です。家の中の家財や、後から見つかった口座もここで受け止められます。
第4条は、長男が先に亡くなった時の備えです。書いておかないと、その部分は改めて話し合いで分けることになります。
自筆で書くなら、全文・日付・氏名を自分で書いて押印します。財産目録はパソコンで作ったものや通帳のコピーでもかまいません(各ページに署名押印が要ります)。
自筆の遺言は、亡くなった後に家庭裁判所の検認が要ります。法務局の自筆証書遺言書保管制度(手数料1通3,900円)を使うか、公証役場で公正証書遺言にすれば、検認は要りません。
兄弟の片方だけが遺言の中身を知っていると、『兄さんが書かせたんじゃないか』と疑われることも。遺言を実行する人(遺言執行者)を決めておくと、手続きが進めやすくなります。誰に頼むかは遺言執行者は誰にすればいい?で比べています。
遺留分が足りない時は、どう書き直す?
『家の方がずっと大きい』ケースでは、次男の取り分が250万円足りません。こんな時の手の打ち方は、主に3つあります。
| 方法 | 書き方の例 | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 預金の配分を変える | 預金のうち長男の分を減らし、次男に多く渡す | 預金が足りない家では限界がある |
| 長男に代償金を払わせる | 家を相続させる代わりに、次男に一定額を払うよう書く | 長男の手元資金が要る |
| 生命保険で次男に渡す | 次男を受取人にした保険を用意する | 保険金は受取人の財産。額が大きすぎると争いの種になることも |
長男が代償金を払う形にする場合、払えないと結局もめてしまいます。払えない時の考え方は代償金を払うお金がない時に実家を相続する方法にまとめています。
もう1つ大事なのが、遺言の最後に添える付言です。例えば、こんな一文が考えられます。
「家は、長年一緒に暮らしてくれた長男に継いでもらいます。そのぶん預金は次男に渡します。2人で仲良く分けてほしい」
付言に法的な効力はありません。ただ、なぜこの分け方にしたのかが伝わると、次男が受け止めやすくなることもあります。
相続税はいくら?長男が同居していた場合は?
遺言どおりに分けた時の相続税を、3つのケースで計算します。法定相続人は2人なので、基礎控除は4,200万円です。
| ケース | 課税価格の合計 | 相続税の総額 | 長男の納付額 | 次男の納付額 |
|---|---|---|---|---|
| 家3,000万円・預金3,000万円 | 6,000万円 | 180万円 | 90万円 | 90万円 |
| 家4,000万円・預金1,000万円 | 5,000万円 | 80万円 | 64万円 | 16万円 |
| 同じ家で長男が同居(土地2,500万円が500万円に) | 3,000万円 | 0円 | 0円(申告は必要) | 0円 |
3つ目は、家4,000万円のうち土地を2,500万円、面積を330㎡以内とした例です。同居していた長男が家の土地を相続すると、特定居住用宅地等として80%減額できる可能性があります。
ここで気をつけたいのは、特例で相続税が0円になっても申告が要ることです。もう1つ、特例で下がるのは相続税の計算だけです。遺留分は家の本来の値段で計算するので、次男の遺留分は減りません。
『税金が0円なら、遺留分も気にしなくていい?』と思いがちですが、そこは別の話なんです。
家と預金のバランスで遺留分が足りるか、同居の長男に特例が使えるかは、家ごとに答えが変わります。遺言を書く前に一度計算しておきたいケースなので、要件を満たすかは税理士に確認してみてください。
税理士ドットコム
わが家のケースは、相続に強い税理士に聞くのが近道
相続税がかかりそう、土地や自宅がある、相続人が多い、期限が近いといったケースでは、相続税に詳しい税理士に早めに相談すると安心です。税理士ドットコムなら、全国7,500名以上の登録税理士から相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。
紹介料無料税理士ドットコムで相続に強い税理士を紹介してもらう(税理士ドットコムの紹介ページに移動します・24時間365日受付)
よくある質問
家を長男に、預金を次男に残すと、兄弟で不公平になりませんか?
金額が違っても、遺言なら親の意思で分けられます。ただ、次男が受け取る額が遺産の4分の1に届かないと、遺留分を請求される余地が残ります。
遺言に「家は長男に」とだけ書いてもいいですか?
財産が特定できないと登記で困ることがあるので、登記事項証明書のとおりに所在・地番・家屋番号まで書いておきましょう。書き漏れに備えて「その他一切の財産は長男に」といった一文も添えておくと安心です。
同居している長男が家を相続すれば、相続税はかかりませんか?
小規模宅地等の特例で土地の評価が80%下がる可能性があり、ケースによっては0円になります。ただ要件があり、0円でも申告が要ります。使えるかどうかは税理士に確かめてみてください。
まとめ
- 家を長男、預金を次男に残す分け方は遺言で実現できる
- 子2人なら次男の遺留分は遺産の4分の1。家の方がずっと大きい家は足りないことがある
- 足りない時は、預金の配分・代償金・生命保険で埋める方法がある
- 書き漏れ対策の一文と、長男が先に亡くなった時の書き方も入れておく
- 同居の長男に小規模宅地等の特例が使えても、遺留分は減らず、申告は必要




