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親が亡くなった後、キャッシュカードで親の口座からお金を下ろしてしまった。『これってまずかったのかな』と、後から心配になる方は少なくありません。
結論から言うと、下ろしたこと自体ですぐに罰せられるわけではありません。ただ、何に使ったかによって、相続放棄ができなくなったり、兄弟から返すよう求められたりすることがあります。
この記事では、引き出した後に何が起きるかをケース別に見ていきます。
引き出した後どうなるかは、使い道で決まる
凍結前に下ろしたお金も、亡くなった人の財産であることに変わりはありません。葬儀代に使って領収書が残っていれば大きな問題になりにくい一方、自分のために使うと兄弟から返還を求められることがあり、借金があっても相続放棄できなくなるおそれがあります。相続税の計算では、下ろした分も死亡日の残高として財産に入ります。
まず、よくある4つのケースを並べてみます。
| ケース | どうなる? | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 葬儀代に使い、領収書がある | 問題になりにくい | 葬式費用は相続税の計算で差し引ける |
| 病院代や公共料金の支払いに使った | 説明できれば問題になりにくい | 誰に何を払ったかの記録が要る |
| 自分や家族の生活費に使った | 兄弟から返すよう求められることがある | 遺産分割で「先にもらった分」と扱われやすい |
| 親に借金があり、相続放棄したい | 放棄できなくなるおそれがある | 財産を使うと相続を認めたとみなされることがある |
同じ「凍結前に下ろした」でも、結果はかなり違いますよね。違いを生むのは、使い道と、それを説明できる記録があるかどうかなんです。

死亡後にATMで下ろしたら、相続放棄はできない?
借金があるかもしれない時に、一番気をつけたいのがここです。
亡くなった人の財産を処分したり使ったりすると、相続を認めた(単純承認)とみなされ、相続放棄ができなくなることがあります。
『少しだけなら大丈夫でしょ?』と思うかもしれません。ただ、どこまでが許されるかは使い道や金額で判断されるので、一律の線はありません。
例えば、こんな2つのケースで比べてみます。
| ケース | 放棄への影響 |
|---|---|
| 下ろしたお金に手を付けず、封筒のまま保管している | 使っていないので、問題になりにくい |
| 下ろしたお金で自分のローンを返した | 相続を認めたと見られるおそれが高い |
放棄の期限は、相続の開始を知った時から3か月以内です。家庭裁判所に申し立てれば、この期間を延ばしてもらうこともできます。
借金の有無が分からないなら、下ろしたお金はそのまま手を付けずに保管しておきましょう。放棄を考えているなら、使う前に家庭裁判所や専門家に確認するのが安全です。
『葬儀代が払えなくて困る』という場合は、親が入っていた生命保険を確かめてみてください。受取人が決まっている生命保険金は受取人自身のお金なので、相続放棄をしても受け取れます。
ただし、放棄した人は生命保険金の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)を使えません。財産が多い家では、この点も含めて考えておきましょう。
なお、2023年4月1日の改正で、放棄をしても、実際に預かっている財産は次の相続人などに引き渡すまで大切に保管する義務があります。
兄弟から「横領だ」と言われたら?
相続人が複数いる時は、下ろしたお金をめぐって兄弟ともめるケースがよくあります。
「お父さんの口座、亡くなった後に300万円も減ってるよね」「葬儀とか色々払ったんだよ」「何に使ったか見せてほしい」。こんな会話から話し合いが止まってしまうことも。
亡くなった後の預金は、遺産分割が終わるまで相続人全員のものです。1人が自分のために使えば、ほかの相続人から返すよう求められたり、遺産分割でその人の取り分から差し引かれたりします。
話し合いでまとまらなければ、家庭裁判所の調停、それでも無理なら審判へ進みます。刑事事件になるかどうかは状況によるので、ここでは扱いません。
『そんなつもりじゃなかったのに』という時ほど、記録が身を守ります。
- いつ、いくら下ろしたかを通帳やATMの明細で書き出す
- 使った分の領収書・請求書を1つの封筒にまとめる
- 使っていない現金は、自分のお金と混ぜずに保管する
- ほかの相続人に、下ろした額と使い道を早めに伝える
ほかの相続人に伝えるのは、気が重いですよね。でも、後から見つかるより、先に自分から伝えた方が話し合いはずっとスムーズです。
相続税の計算では、下ろした分はどう扱う?
下ろしたからといって、相続財産が減るわけではありません。預貯金は相続開始日、つまり死亡日の残高で評価します。
亡くなった後に下ろした分は、死亡日の残高に含まれています。一方、葬儀代として払った分は、葬式費用として課税価格から差し引けます。
例えば、母がすでに亡くなっていて、父の財産を子2人が相続するケースです。預金を含めた財産は合計5,000万円、凍結前に200万円を下ろして葬儀代に使ったとします。
| ケース | 課税価格の合計 | 基礎控除 | 納付額の合計 |
|---|---|---|---|
| 葬式費用200万円を差し引いた | 4,800万円 | 4,200万円 | 60万円 |
| 領収書がなく差し引けなかった | 5,000万円 | 4,200万円 | 80万円 |
領収書がないだけで、納める額が20万円違ってきます。葬儀社への支払いのほか、お寺へのお布施など領収書が出ないものはメモを残しておきましょう。

注意したいのは、亡くなる直前に下ろしたケースです。下ろした現金が手元に残っていれば、それは「現金」という財産として申告に入れます。
相続税の税務調査では、預金の動きがよく確認されます。国税庁の公表では、令和6事務年度の実地調査で申告漏れなどが見つかった割合は82.3%でした。
下ろした現金の申告漏れは、調査で見つかりやすいところなんです。葬式費用に入らない費用の例は、葬儀費用は誰が払うかと相続税の控除で確かめられます。
引き出しのことで不安な時は誰に相談する?
下ろしたお金が多い、兄弟と話がこじれそう、相続税がかかりそう。こんな時は、早めに専門家に入ってもらうと楽になります。
逆に、相続人が自分1人で、財産も基礎控除より少なく、借金もないケースなら、下ろしたお金で困ることはあまりありません。記録だけ残しておけば十分です。
兄弟との交渉や調停は弁護士、相続税の申告や預金の動きの説明は税理士の仕事です。財産が基礎控除を超えそうで、預金の出入りの説明も必要なケースなら、税理士に一度見てもらうと安心です。
基礎控除を超えるかどうかの目安は、遺産がいくらから相続税がかかるかで人数別に見られます。
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わが家のケースは、相続に強い税理士に聞くのが近道
相続税がかかりそう、土地や自宅がある、相続人が多い、期限が近いといったケースでは、相続税に詳しい税理士に早めに相談すると安心です。税理士ドットコムなら、全国7,500名以上の登録税理士から相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。
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よくある質問
親が亡くなる前に、頼まれてお金を下ろしていた場合は?
頼まれて下ろしたお金で、親が使った分は問題になりにくいです。ただ、手元に残った現金は相続財産として申告に入れます。何に使ったかの記録を残しておきましょう。
下ろしたお金を返せば、相続放棄はできますか?
一度使ってしまった後に返しても、相続を認めたと見られるおそれは残ります。放棄を考えているなら、家庭裁判所や専門家に早めに相談してみてください。
下ろしたことを兄弟に言わずに遺産分割してもいいですか?
後から通帳の記録で分かると、分割のやり直しを求められることもあります。下ろした額と使い道は、話し合いの前に伝えておきましょう。
まとめ
- 凍結前に下ろしても、そのお金は相続人全員の財産のまま
- 葬儀代など説明できる使い道で、領収書があれば問題になりにくい
- 自分のために使うと、返還を求められたり相続放棄できなくなったりする
- 相続税は死亡日の残高で計算し、葬式費用は差し引ける





