農家の親が亡くなった時に田畑や農機具を相続する手続き

農家の親が亡くなった時に田畑や農機具を相続する手続きを解説する記事のアイキャッチ

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農家だった親が亡くなり、田んぼや畑、トラクター、作業小屋が残った。『会社員の家とは手続きが違うの?』と迷いますよね。

結論から言うと、農家の相続は普通の相続手続きに「農地ならではの届出」と「農業を続けるかどうかの判断」が加わります。誰が田畑を継ぐかで、使える制度も税額も変わってくるんです。

この記事では、農家の家でよくある家族の形を例に、手続きの順番と相続税の目安が分かります。

目次

農家の親が亡くなったら、まず何が違う?

このケースの結論

田畑を相続した人は、市町村の農業委員会への届出が要ります。相続(遺産分割を含む)なら農地を受け継ぐための許可は要りませんが、届出をしないと10万円以下の過料の対象です。相続登記の義務(知った日から3年以内)も、ほかの土地と同じようにかかります。

普通の会社員の家なら、主な財産は自宅と預貯金ですよね。農家の家は、そこに田畑・農機具・作業場・収穫前の作物が加わります。

さらに、親が農業で収入を得ていたなら、親の所得税の申告(準確定申告)も要るんです。期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。

手続き期限農家ならではの注意
死亡届死亡を知った日から7日以内普通の相続と同じ
年金の受給停止厚生年金10日以内・国民年金14日以内農業者は国民年金だけの人も多い
準確定申告4か月以内農業の収入・経費も申告する
相続税の申告・納付10か月以内農地の納税猶予を使うなら申告が要る
農業委員会への届出遅滞なく相続で農地を取得した人が出す
相続登記取得を知った日から3年以内田畑も対象。怠ると10万円以下の過料

農業委員会への届出は、法律では「遅滞なく」と書かれています。具体的な受付の期間や書式は、農地のある市町村の農業委員会で確認しておきましょう。

亡くなった親が個人事業として農業をしていた場合、事業を止める・引き継ぐ手続きも出てきます。全体の流れは個人事業主の親が亡くなった時に事業を引き継ぐ手続きと期限にまとめています。

長男が継ぐ家と、子2人で分ける家ではいくら違う?

このケースの結論

例えば、財産が合計8,000万円の農家で、母と子2人が相続すると納付額は合計262万5,000円です。母が先に亡くなっていて子2人だけなら、同じ8,000万円でも合計470万円に増えます。配偶者がいるかどうかで、基礎控除と配偶者の税額軽減の分だけ差がつきます。

ここでは、次の財産を残した農家の父のケースで考えます。田畑の評価は場所によって大きく違うので、あくまで計算の例として見てください。

財産評価額引き継ぐ人の例
田畑3,000万円農業を継ぐ長男
自宅の土地2,000万円長男(同居)
自宅の建物500万円長男(同居)
農機具・作業場500万円長男
預貯金2,000万円母、または長女
合計8,000万円

この財産を、家族の形を変えて計算すると次のようになります。

ケース基礎控除取得の仕方納付額理由・注意
母・長男・長女4,800万円母2,000万円・長男4,000万円・長女2,000万円合計262万5,000円(母0円・長男175万円・長女87万5,000円)母は配偶者の税額軽減で0円。ただし申告は要る
長男・長女(母は先に死亡)4,200万円長男6,000万円・長女2,000万円合計470万円(長男352万5,000円・長女117万5,000円)田畑と自宅を長男が持つ分、長男の税額が重くなる
長男・長女で自宅の敷地に特例4,200万円法定相続分どおり合計230万円(1人115万円)自宅の敷地2,000万円が80%減額で400万円に。要件と申告が要る

『長男がほとんど持っていくのに、税額は半々じゃないの?』と思うかもしれません。相続税は、総額を出してから実際に取得した割合で分けるので、多く受け継いだ人ほど多く払う仕組みなんです。

農家の父の財産8,000万円の内訳と、母・長男・長女が相続する家系図と取り分

2つ目のケースは、どう計算している?

計算の流れを1つ見ておくと、自分の家の数字にも当てはめやすくなりますよ。母が先に亡くなり、長男と長女の2人で相続するケースです。

計算の段階金額ポイント
課税価格の合計8,000万円田畑・自宅・農機具・預貯金の合計
基礎控除4,200万円3,000万円+600万円×2人
課税遺産総額3,800万円8,000万円−4,200万円
法定相続分で1人分1,900万円速算表で税率15%・控除額50万円
相続税の総額470万円2人分の合計
長男の納付額352万5,000円6,000万円を取得(全体の4分の3)
長女の納付額117万5,000円2,000万円を取得(全体の4分の1)

長男は田畑と自宅を受け継いでも、現金はほとんど手元にありません。

「農業を続けたいけど、352万円をすぐには払えないよ」

「預貯金を少し多めに分けて、そこから払う?」

こうした話し合いは、農家の相続では本当によくあります。分け方を決める時は、誰が税金をどう払うかもセットで考えておきましょう。

田畑を継いで農業を続けるなら使える制度は?

このケースの結論

相続人が田畑を受け継いで農業を続ける場合、農地等についての相続税の納税猶予を使える可能性があります。農地の価額のうち農業投資価格を超える部分に対応する相続税が猶予され、その相続人が亡くなった時などに免除されます。

納税猶予は、農業を続けることが前提の制度です。途中で農業をやめたり、田畑を売ったりすると、猶予されていた税額を納めることになります。

『とりあえず猶予を受けておけばいいのでは?』と考える方も多いはずです。ただ、ここが大事なところです。

長男がこの先も長く農業を続けるつもりがあるか。体力や後継ぎの予定も含めて、家族で話してから決める方が後悔しにくいんです。

ケース納税猶予の向き不向き理由・注意
長男が専業で農業を続ける向いている猶予された税額は、続けていれば最終的に免除される道がある
長男が会社勤めで、週末だけ農業要件を確認農業を営んでいると言えるかどうかの判断が要る
数年後に田畑を売る予定がある向かない売ると猶予が打ち切られ、猶予されていた税額を納める
田畑を生前に精算課税で贈与された使えない相続時精算課税を選んだ農地はこの特例の対象外
相続人が農業を続けるかどうかで、納税猶予・貸す・売る・国庫帰属制度のどれを選ぶかが分かれる分岐表

要件は細かく、農業委員会の証明書なども必要になります。使えるかどうかは、税理士に確認してみてください。制度の概要は国税庁の農地等についての相続税の納税猶予の特例で確認できます。

トラクターや収穫前の作物はどう評価する?

農機具も相続財産なんです。トラクターやコンバイン、乾燥機など、1台ずつ評価するのが原則です。

国税庁の財産評価のルール(財産評価基本通達)では、農機具などの動産は売買の実例や専門業者の意見をもとに評価します。分からない時は、同じ型の新品の小売価額から、使った年数分の減価を差し引いた金額で評価します。

財産評価の考え方注意
トラクター・コンバインなど中古の売買実例や業者の意見を参考にする1台ずつ評価が原則
小さな農具1個5万円以下のものは、一農家ごとにまとめて評価できる鍬や小型の道具など
収穫前の作物亡くなった後3か月以内に収穫が見込まれるものは別に評価する収穫時の販売価額の70%の範囲内で評価
作業小屋・倉庫固定資産税評価額建物として評価

『古いトラクターだから価値はないよね』と思いがちです。でも、中古の農機具は売れることが多く、売買の実例があれば評価額がつきます。

農機具を誰が使うかも、分ける時のポイントです。継ぐ人が農機具をまとめて受け継ぐなら、その分を預貯金で調整する家も多いですね。

反対に、農機具のローンや肥料代の未払いが残っていることもあります。亡くなった時点で残っている借入金や未払いの税金は、相続税の計算で財産から差し引けます。

『ローンの残りは誰が払うの?』と迷ったら、借入金も遺産分割の話し合いに入れておきましょう。農機具を受け継ぐ人がローンも引き継ぐ形にすると、分け方の筋が通りやすくなります。

個人で商売をしていた親の在庫や売掛金の評価は、個人事業主の在庫や売掛金の評価で詳しく見ています。

誰も農業を継がない時はどうする?

このケースの結論

子どもが全員会社勤めで農業を継がない場合でも、田畑の相続はできます。相続した後で、貸す・売る・国に引き取ってもらう(相続土地国庫帰属制度)などの道を選ぶことになります。農地の売買や貸し借りには、相続と違って農業委員会の許可が要ることがあります。

例えば、親は都市部から離れた場所に田畑を持っていて、子2人は県外で暮らしているケースです。

選択肢向いているケース注意
近くの農家に貸す田畑を手放したくない貸し借りには農業委員会の手続きが要ることがある
農家に売る管理を続けられない買い手は農業をする人に限られることが多い
相続土地国庫帰属制度を使う貸す・売るが難しい審査手数料は1筆14,000円、承認後に負担金。建物がある土地などは申請できない
相続放棄する借金の方が多い田畑だけを放棄はできず、すべての財産を放棄することになる。期限は3か月

『いらない田畑だけ放棄したい』という声はよく聞きます。ただ、相続放棄は財産全部を手放す手続きなので、田畑だけを外すことはできません。

国庫帰属制度の負担金は、原則20万円です。農地の一部などは面積で計算される場合があるので、法務局で確認してみてください。

使わない土地の扱い方は、実家・空き地・賃貸物件のケース別にやることも参考になります。

田畑や土地が多い家で、相続税が払えない時は?

田畑が多い家は、財産のほとんどが土地になりがちです。土地は評価がついても、すぐにお金には変わりませんよね。

例えば、上のケースで母が先に亡くなっている場合、長男は352万5,000円を10か月以内に納めます。預貯金を長女が受け継いでいたら、長男の手元には現金が残りません。

こんな時は、預貯金の分け方を見直す、延納(分割払い)を申請する、使わない土地を売るといった方法を考えます。土地が特に多い家の考え方は、土地をたくさん持つ地主の相続で相続税が払えない時の考え方で詳しく見ています。

田畑と自宅の評価、納税猶予を使うかどうか、誰がいくら払うか。この3つを同時に決めるのは、家族だけだと大変です。農地の評価や納税猶予の手続きに慣れた税理士に頼むと、10か月の期限の中で段取りを組みやすくなります。

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わが家のケースは、相続に強い税理士に聞くのが近道

相続税がかかりそう、土地や自宅がある、相続人が多い、期限が近いといったケースでは、相続税に詳しい税理士に早めに相談すると安心です。税理士ドットコムなら、全国7,500名以上の登録税理士から相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。

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手続きはどの順番で進める?

最後に、農家の相続で何をどの順番で進めるかを確かめておきましょう。

農家の相続の進め方
  1. 死亡届を出し、年金の受給停止の手続きをする
  2. 田畑・自宅・農機具・預貯金・借入金を書き出す
  3. 親の農業の収入と経費をまとめ、4か月以内に準確定申告をする
  4. 誰が田畑を継ぐか、農業を続けるかを家族で話し合う
  5. 遺産分割協議書を作り、相続登記をする
  6. 田畑を取得した人が、農業委員会へ届け出る
  7. 10か月以内に相続税を申告・納付する(納税猶予を使うならこの申告で)

『全部を自分たちでやれるかな』と不安になりますよね。登記は司法書士、相続税の申告は税理士と、専門家ごとに担当が分かれています。

まずは財産の一覧を作って、どこから手をつけるかを決めてみてください。

よくある質問

相続で田畑を受け継ぐ時、農業委員会の許可は要りますか?

相続(遺産分割を含む)で取得する場合は、許可は要りません。そのかわり、取得した人は遅滞なく農業委員会に届け出る必要があります。届出をしないと10万円以下の過料の対象です。

農業をしていない会社員の子でも田畑を相続できますか?

相続ならできます。相続した後で売ったり貸したりする時は、農地のルールで農業委員会の許可が要ることがあります。

親が使っていたトラクターを売ったお金は相続税の対象ですか?

亡くなった時点のトラクターそのものが相続財産です。売って得たお金で評価するのではなく、亡くなった時点の価額で評価します。

母が全部受け継げば、相続税は0円になりますか?

配偶者の税額軽減で母の分は0円になりやすいですが、使うには申告が要ります。母が亡くなった時の二次相続で、子の負担が大きくなることもあるので注意しておきましょう。

田畑の評価額はどうやって調べますか?

市街地の田畑は路線価、それ以外は固定資産税評価額に倍率をかける方法が基本です。田畑の場所や種類で評価の仕方が変わるので、迷ったら税理士に確認してみてください。

まとめ

この記事の要点
  • 田畑を相続した人は農業委員会への届出が要る。相続なら許可は不要
  • 田畑も相続登記の義務の対象で、取得を知った日から3年以内
  • 財産8,000万円の例では、母と子2人なら合計262万5,000円、子2人だけなら合計470万円
  • 農業を続けるなら農地の納税猶予を使える可能性がある。やめると打ち切り
  • 誰も継がない時は、貸す・売る・国庫帰属制度などを比べて決める
相続ケース案内

相続ケース案内 編集部

家族構成や財産の状況ごとに、相続・相続税がどうなるかを公的機関の公開情報をもとに解説しています。 公式サイト

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