相続人が1人だけの場合の手続きを最初から最後まで解説

相続人が1人だけの場合の手続きを解説する記事のアイキャッチ

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母はもう亡くなっていて、父の相続人はひとりっ子の自分だけ。誰とも話し合わなくていいのは気が楽だけど、何から手をつければいいのか分からない、という方も多いはずです。

結論から言うと、相続人が1人だけの「単独相続」は、話し合いの手間がない分、手続きの流れはかなりシンプルです。ただし、相談相手がいないぶん、期限や書類の抜けに自分で気づく必要があります。

この記事では、単独相続の手続きを最初から最後まで、家族の形と遺産の大きさ別に確認していきます。

目次

相続人が自分1人だけなら、何が楽で何が大変?

このケースではこうなる

相続人が1人だけなら、遺産分割協議(相続人全員の話し合い)は要りません。銀行や法務局には「自分が唯一の相続人だ」と分かる戸籍の束を出せば名義を移せます。一方で、相続税がかかるかどうかの境目(基礎控除)は3,600万円と最も低く、遺産5,000万円なら相続税は160万円になります。

単独相続で一番大きいのは、遺産分割協議書を作らなくていいことです。

銀行も法務局も、相続人が複数いる時は「全員の合意を示す書類と全員の印鑑証明書」を求めます。1人なら、その部分がまるごと要りません。

『じゃあ、戸籍さえ集めればすぐ終わる?』と思いますよね。

実は、ここに落とし穴があります。「本当に相続人が自分1人か」を戸籍で証明する作業が、思ったより手間なんです。

亡くなった人の出生から死亡までの戸籍をすべてつなげて、ほかに子どもがいないことを示す必要があります。前の結婚で生まれた子や、認知した子がいれば、その人も相続人になるからです。

単独相続になる家族の形

単独相続になるのは、次のようなケースです。

ケース相続人注意
配偶者が先に亡くなり、子が1人子1人前の結婚の子がいないか戸籍で確認
子がおらず、親・兄弟姉妹もいない配偶者1人兄弟姉妹が1人でもいれば配偶者と共同相続
子がいない独身で、親が1人存命親1人祖父母は親がいれば相続人にならない
相続人が複数いたが、他の全員が相続放棄残った1人放棄した人の分は次の順位の人に回ることがある
単独相続になる家族の形を家系図で示した図

最後のケースは少し注意が要ります。

例えば、子2人のうち1人が放棄しても、もう1人の子が全部を相続するだけです。ところが、子が全員放棄すると、親や兄弟姉妹に相続権が移ります。「自分だけ残ったつもりが、実は叔父も相続人だった」ということもあるんです。

単独相続の手続きは、どんな順番で進める?

流れそのものは、相続人が複数の時とほぼ同じです。違うのは、協議書づくりが抜けることだけ。

単独相続の手続きの流れ
  1. 死亡届を出す(死亡を知った日から7日以内)
  2. 年金・健康保険の手続きをする(厚生年金は10日以内、国民年金・国保は14日以内)
  3. 遺言書があるか探す(自筆の遺言なら家庭裁判所の検認が要る)
  4. 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍と、自分の戸籍を集める
  5. 財産と借金を一覧にする(3か月以内に放棄するかを決めるため)
  6. 準確定申告をする(所得があった場合・4か月以内)
  7. 銀行・証券・不動産の名義を自分に移す
  8. 相続税の申告をする(基礎控除を超える場合・10か月以内)
  9. 相続登記を済ませる(取得を知った日から3年以内)

死亡直後の手続きは、葬儀社や役所が教えてくれることが多いですよね。

本当に自分で動かなければいけないのは、4番の戸籍集めからです。時期ごとのやることは親が亡くなった後のやることリストで確認できます。

戸籍集めは「法定相続情報一覧図」で一度にまとめる

戸籍の束は、銀行・証券会社・法務局・税務署のそれぞれで求められます。

そのたびに原本を出して返してもらうのは大変です。そこで使いたいのが、法務局の「法定相続情報証明制度」です。

戸籍の束と家系図のような一覧図を法務局に出すと、「法定相続情報一覧図の写し」を無料で交付してもらえます。これ1枚が戸籍の束の代わりになるので、銀行と法務局に同時に出すこともできます。

『戸籍は本籍地が何か所もあって、取り寄せが面倒…』という方もいますよね。

2024年3月1日からは、本籍地以外の市区町村窓口でも、親や配偶者の戸籍をまとめて請求できるようになりました。ただし郵送や代理人には使えず、本人が窓口に行く必要があります。

銀行・不動産の名義変更で出すものは?

単独相続の書類は、相続人が複数の時より少なくなります。目安は次の表のとおりです。

手続き主な書類(遺言なし・単独相続)複数相続人との違い
銀行の預金金融機関の相続届、戸籍の束か一覧図の写し、自分の印鑑証明書、通帳協議書と他の相続人の印鑑証明書が要らない
証券口座相続手続き依頼書、戸籍の束か一覧図の写し、自分の印鑑証明書、自分名義の口座同じく協議書が要らない
自宅の土地・建物登記申請書、戸籍の束か一覧図の写し、自分の住民票、固定資産評価証明書協議書と印鑑証明書が要らない

銀行ごとの細かい違いは銀行の相続手続きで必要な書類の一覧にまとめています。

家の名義変更は、単独相続なら自分で申請しやすい部類です。登録免許税は固定資産税評価額の0.4%なので、評価額が1,500万円の家なら6万円です。

例えば、こんな会話になることも。

「協議書は要らないんですか?」
「相続人がお一人なので不要です。その代わり、ほかに相続人がいないことを戸籍で確認させてください」

自分で登記する時の流れは親の家の名義を自分で変える手順を見てみてください。

相続人1人だと、相続税はいくらからかかる?

ここが単独相続で一番気をつけたいところです。

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」なので、相続人が1人なら3,600万円。家族の形の中で最も低い境目なんです。

遺産の額ごとに、子1人だけで相続した場合を計算しました。

遺産(課税価格の合計)基礎控除課税遺産総額相続税
3,000万円3,600万円0円0円(申告不要)
5,000万円3,600万円1,400万円160万円
6,000万円3,600万円2,400万円310万円
8,000万円3,600万円4,400万円680万円
子1人で遺産5,000万円を相続した場合の計算シート

5,000万円の場合は、1,400万円に15%をかけて50万円を引き、160万円になります。

配偶者1人だけが相続するケースは0円になりやすい

同じ8,000万円でも、相続人が配偶者1人だけなら話が変わります。

配偶者の税額軽減で、1億6,000万円か法定相続分のどちらか多い額までは相続税がかかりません。配偶者が全部を相続するので、8,000万円なら納める相続税は0円です。

ただ、ここで終わりではありません。0円でも、軽減を使うには申告が要ります。『税金がないなら何もしなくていい』と思いがちなので、ここは覚えておいてください。

単独相続で見落としやすいこと
  • 自宅の土地を小規模宅地等の特例で80%減額する場合も、0円になっても申告が必要
  • 預金は少なくても、自宅の土地を入れると3,600万円を超えることがある
  • 借金が多そうなら、相続を知ってから3か月以内に放棄を検討する

自宅の土地があって基礎控除の3,600万円を超えそうな方や、特例を使うかどうか迷う方は、評価と申告をまとめて税理士に頼むと、1人で抱え込まずに済みます。

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わが家のケースは、相続に強い税理士に聞くのが近道

相続税がかかりそう、土地や自宅がある、相続人が多い、期限が近いといったケースでは、相続税に詳しい税理士に早めに相談すると安心です。税理士ドットコムなら、全国7,500名以上の登録税理士から相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。

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申告全体の進め方は遺産規模別の相続税申告の手順でも確認できます。

よくある質問

相続人が1人でも遺産分割協議書を作った方がいいですか?

単独相続では遺産分割協議そのものが行われないので、協議書は作りません。銀行や法務局には、相続人が1人であることが分かる戸籍の束か法定相続情報一覧図の写しを出します。

相続人が1人なら、相続登記はしなくてもいいですか?

いいえ、相続人が1人でも登記は必要です。2024年4月1日から相続登記は義務になり、不動産の取得を知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由がない場合は10万円以下の過料の対象になります。

兄弟が相続放棄したので自分1人になりました。基礎控除も1人分ですか?

いいえ、相続放棄した人も法定相続人の数に数えます。子2人のうち1人が放棄しても、基礎控除は2人分の4,200万円です。

まとめ

この記事の要点
  • 相続人が1人なら遺産分割協議書は不要。代わりに「相続人が自分だけ」と戸籍で示す
  • 戸籍の束は法定相続情報一覧図の写しにまとめると、銀行・法務局・税務署で使い回せる
  • 相続人1人の基礎控除は3,600万円。子1人で遺産5,000万円なら相続税は160万円
  • 配偶者1人が相続して0円になる場合も、配偶者の税額軽減を使うには申告が要る
  • 相続登記は単独相続でも義務。取得を知ってから3年以内に
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相続ケース案内 編集部

家族構成や財産の状況ごとに、相続・相続税がどうなるかを公的機関の公開情報をもとに解説しています。 公式サイト

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