相続の書類にハンコを押してくれない相続人がいる時の対応

遺産分割協議書にハンコを押してくれない相続人がいる時の対応を解説する記事のアイキャッチ

当サイトは国税庁・法務省・裁判所などの公開情報をもとに編集部が執筆しています。記事内のサービス紹介には広告を含みます。

遺産分割協議書を作って送ったのに、兄弟の一人だけがいつまでもハンコを押してくれない。『このままだと何も進まない』と困っている方も多いはずです。

結論から言うと、ハンコがないまま進められる手続きは限られていますが、打つ手はあります。この記事では、押さない理由ごとに対応を分けて、期限との付き合い方まで見ていきます。

目次

ハンコを押してくれないと、相続はどこで止まる?

このケースの結論

遺産分割協議は相続人全員の合意が必要なので、一人でもハンコを押さなければ協議書は完成しません。話し合いで解決しない時は、家庭裁判所の調停、それでもまとまらなければ審判で分け方が決まります。その間も相続税の申告期限(10か月)は延びないので、未分割のまま申告する準備が要ります。

協議書がないと、止まる手続きは意外と多いんです。

  • 預貯金の名義変更や解約
  • 実家の土地・建物を誰が相続するかを決めた相続登記
  • 相続税の特例(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例)を使った申告
  • 実家の売却

逆に、ハンコがなくても進められることもあります。1つの金融機関ごとに上限150万円までは、預貯金の仮払い制度で単独で払い戻せます。葬儀費用や当面の生活費が心配な方は、まずこれを使ってみてください。

ただし、払い戻した分はその人が遺産の一部を先に受け取った扱いになり、後の分割で調整されます。

押さない理由で、対応はどう変わる?

『どうして押してくれないのか分からない』という方もいますよね。まずは理由を確かめるのが近道なんです。

ケース考えられる理由対応
連絡はつくが、返事をしない忙しい・面倒・書類の意味が分からない期限と困っている事情を書面で伝え、説明の場を設ける
取り分に不満がある介護の貢献や生前の援助(特別受益)を考えてほしい財産の一覧を開示し、条件を出し合う。まとまらなければ調停
協議書の中身を見せてもらえていないと感じている財産を隠されている不信感通帳や評価の資料をそのまま見せる
連絡がまったく取れない疎遠・行方が分からない戸籍の附票で住所を調べて手紙を出す。所在不明なら家庭裁判所の手続きを検討
相続人が認知症などで判断が難しい本人が合意できない家庭裁判所に後見人の選任を申し立てる方法がある
ハンコを押さない理由ごとに、話し合い・資料の開示・調停など対応が分かれる様子を示したケース別の分岐表

一番多いのは、取り分への不満や、財産を全部見せてもらえていないという不信感です。

例えば、こんなひと言で状況が変わることがあります。

「財産の資料は全部コピーして送るから、気になる所があったら教えて」

一方的に作った協議書を送って「押して」とだけ頼むと、相手は反発しやすいんです。分け方を決める前に、財産の一覧を全員で共有しておきましょう。

取り分に不満がある場合は、相手の言い分を先に聞いてみるのも手です。例えば、長女が親の介護を長く担っていたのに、協議書が均等割りになっていたケースです。

『私だけが介護してきたのに、同じ取り分なの?』という気持ちが、ハンコを止めていることがあります。この場合、寄与分として取り分を調整するか、介護の負担を考えた分け方を提案できるかがポイントになります。

連絡が取れない相続人がいる場合は、まず戸籍の附票で今の住所を確かめます。手紙を送っても返事がない時は、家庭裁判所の調停を申し立てれば、裁判所から呼び出しが届きます。行方が分からない場合は、家庭裁判所での別の手続きが必要になるので、弁護士や司法書士に相談してみてください。

話し合いがまとまらない時は、どう進める?

ここが大事なところです。感情的なやり取りが続くなら、早めに家庭裁判所の調停へ切り替えたほうが結果的に早いこともあります。

ハンコをもらえない時の進め方
  1. 財産と借金の一覧、評価の資料を全員に送る
  2. 返事の期限を決めて、書面で協議を申し入れる
  3. それでも話が進まなければ、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる
  4. 調停でもまとまらなければ、審判で裁判所が分け方を決める

調停は、裁判所で調停委員が間に入って双方の話を聞く手続きです。顔を合わせずに話を進められることも多く、当事者同士では言いにくいことも伝えやすくなります。

とはいえ、いきなり裁判所から書類が届くと、相手が身構えてしまうことも。申し立てる前に、ひと言伝えておくと関係がこじれにくくなります。

「責めたいわけじゃなくて、第三者に入ってもらって公平に決めたいから、調停をお願いしようと思う」

『いつか話がつくまで待てばいい』と思うかもしれません。ただ、遺産分割に期限はないものの、相続開始から10年を過ぎると、特別受益や寄与分を主張できなくなります。原則として法定相続分で分けることになるので、介護の貢献などを考えてほしい人ほど早めに動いたほうがいいんです。

相続登記にも期限があります。不動産の取得を知った日から3年以内の登記が義務で、分割がまとまらない時は、自分が相続人だと申し出る相続人申告登記で義務を果たせます。

分割が遅れると、相続税はどれだけ増える?

相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。分割がまとまっていなくても、この期限は延びません。

その場合は法定相続分で分けたと仮定して申告し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を出しておきます。分割が決まった後に、更正の請求で特例を受けられます。

例えば、母が亡くなり子3人が相続するケースです。財産は1億2,000万円で、うち母と同居していた長男が住む実家の土地が5,000万円(330㎡以内)だとします。

項目未分割のまま申告(特例なし)分割が決まり特例を使った場合
実家の土地の評価5,000万円1,000万円
課税価格の合計1億2,000万円8,000万円
基礎控除(相続人3人)4,800万円4,800万円
課税遺産総額7,200万円3,200万円
相続税の総額930万円329万9,700円

未分割のままだと、いったん930万円を納めることになります。分割が決まって特例を受けられれば、総額は329万9,700円まで下がり、差額は更正の請求で戻ってきます。各人の税額は、実際に取得した割合で変わります。

ただ、一時的とはいえ600万円以上を多く用意しなければならないのは大きな負担ですよね。現金が足りない時の考え方は、不動産ばかりで現金がない時の相続税の払い方で詳しく見られます。

小規模宅地等の特例は、同居していた長男が申告期限まで住み続けるなどの要件があります。要件を満たすかは税理士に確認してみてください。

ハンコを押してくれない相続人がいて、土地がある、申告期限が近い、という場合は、未分割での申告と分割見込書の準備を早めに始める必要があります。相続税の申告は税理士、調停の代理は弁護士の仕事なので、まず税理士に期限の段取りを相談しておくと安心です。

税理士ドットコム

わが家のケースは、相続に強い税理士に聞くのが近道

相続税がかかりそう、土地や自宅がある、相続人が多い、期限が近いといったケースでは、相続税に詳しい税理士に早めに相談すると安心です。税理士ドットコムなら、全国7,500名以上の登録税理士から相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。

紹介料無料税理士ドットコムで相続に強い税理士を紹介してもらう

(税理士ドットコムの紹介ページに移動します・24時間365日受付)

相続人の確定がまだなら、相続で集める戸籍の範囲から確認しておきましょう。

よくある質問

ハンコを押さない相続人を外して、遺産分割協議を進められますか?

できません。遺産分割協議は相続人全員の合意が必要で、一人でも欠けた協議は成立しません。

調停を申し立てたら、相続税の申告期限は延びますか?

延びません。期限までに法定相続分で仮に申告し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を出しておきましょう。

相続放棄した兄弟のハンコも必要ですか?

必要ありません。相続放棄をした人は初めから相続人でなかったことになるので、遺産分割協議に加わりません。

まとめ

この記事の要点
  • 遺産分割協議は全員の合意が必要で、一人でも押さなければ協議書は完成しない
  • 押さない理由を確かめ、財産の資料を全部見せることから始める
  • まとまらなければ家庭裁判所の調停、それでもだめなら審判
  • 相続税の申告期限は延びないので、未分割で申告し分割見込書を出しておく
相続ケース案内

相続ケース案内 編集部

家族構成や財産の状況ごとに、相続・相続税がどうなるかを公的機関の公開情報をもとに解説しています。 公式サイト

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次